●すべての行動において、グローバル・パートナーに敬意を示す
当たり前のことと思われるかもしれないが、驚くほど多くの海外赴任者が、この原則を守らないために海外任務の成功を早々に逃している(残念ながら、ここには多数のアメリカ人も含まれる)。世界各地のチームと協働し、ブランドを新たな市場へと広げていくためには、スティーブン・コヴィーのアドバイスがまさに当てはまる――「まず相手を理解するように努め、その後で自分を理解してもらうようにする」。たとえば、KFCインターナショナルで私は「ヘルピング・ハンド賞」を設けた。これは新興国市場のチームに国の枠組みを超えて援助の手を差し伸べたチームを四半期ごとに表彰する制度だ。仲間によるシンプルで自由な表彰制度は、KFCのあらゆる市場で相互尊重の精神を育むうえできわめて有効だった。
●ブランドに関して「変えてよいもの」と「変えてはいけないもの」を、はっきりさせる
たとえば商標やロゴ、主力製品(KFCの場合はオリジナルレシピがその一例)など、現地のチームが変えてはいけない明白なものもある。できるだけ多くの事項について、柔軟に対応できる権限を現地のチームに与えれば、最終製品への当事者意識をより強く感じるはずだ。たとえばイーベイは、現地のマーケティング部門が最初に重点的に取り組みたいカテゴリーと、それを売り手と買い手にどうプロモーションするかを決定できるようにした。H&Rブロック(アメリカを本拠にグローバル展開する税務サービス企業)のインド支店では、インターネット・ベースのサービスに重点を置き、リテール店舗の設置はごくわずかに留めた。これはアメリカとは正反対の戦略だ。新しい市場に協調的かつ柔軟なやり方で参入すれば、成功の可能性は大いに高まる。
●グローバル・ブランド戦略では、「what」よりも「why」を理解するほうがはるかに重要である
KFCのブランドをグローバルで管理するためアメリカに戻った私は、新しい上司から海外視察を要請された。世界の各拠点を周ってさまざまな現地チームに会い、グローバルベースの戦略と施策を策定するという任務だ。6週間の出張から戻った私は上司にこう報告した。「グローバル戦略の重要性と根拠について、世界中の拠点に理解してもらうよい方法を見つけなければ大変なことになります」
そして我々はKFCグローバル・マーケティング・カレッジを創設し、世界中からチームを迎え入れた。この取り組みが大きな事業成果を生むまで数年かかったが、グローバル戦略を信頼するチームの数が一定数を超えると、一気に成果が生まれていった。以来、KFCインターナショナルは20億ドルから140億ドルの事業に成長した。
以上の原則は、海外進出を目指すどの企業にも――その規模が2カ国であれ200カ国であれ――適用できる。グローバルの事業パートナーに敬意をもって接し、ブランド戦略に必要な知見を提供し、実践を現地に見合ったやり方に任せれば、成功の可能性は高まるだろう。
HBR.ORG原文:Get Buy-in for Your Global Strategy with Local Partners October 21, 2014
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キップ・ナイト(Kip Knight)
H&Rブロックの米リテール業務担当プレジデント。以前はプロクター・アンド・ギャンブル、ペプシコ、ヤム・ブランズおよびイーベイで、マーケティング担当の経営幹部を歴任。