人間関係は「ギブ・アンド・テイク」と言われるが、「ギブ」できることがないほど圧倒的な地位の人もいる。そのような人とどのように関係づくりをするか。ここでは、「テイク・アンド・テイク」も有効である。

 

人は意外と頼みごとを引き受けてくれる

 仕事柄、経営者など社会的に責任ある地位についている人とお付き合いさせていただく機会は多いです。そんな時、いつも悩むのが、「彼らとギブ・アンド・テイクの関係を築けない」ということです。

 取材のために時間を割いていただいたり、こちらのお願いごとを引き受けていただく機会は多く、私に限らず編集者は多くの方々からテイクをいただいております。それを仕事でお返しすることに専念しますが、人としてのお付き合いを考えると、どう考えてもギブできるものなど限られます。

 特に20代の頃はそういうジレンマに直面しました。自分と著者の社会的価値を考えると、こちらが彼らにギブできるものなどほとんどないのではないか。こちらが会食を設定するなど、見せかけのギブに過ぎず、彼らの1時間の価値を、自分がどう返すのか悩みどころです。

 そこで、自分より目上の人との関係づくりでは「ギブ・アンド・テイク」は難しいと考えます。むしろ、「テイク・アンド・テイク」で関係づくりがうまくいくケースの方がはるかに多い。

 ベンジャミン・フランクリンも「友人をつくるには、頼みごとをすること」との名言を残しています。これは私の経験からも強く同意できます。

 人は意外と頼まれごとを引き受けてくれるものです。節度を持って「好意に甘える」というのは、恥ずかしいことはありません。ずうずうしいのではという線を少し超えてお願いしてみる。それで引き受けていただけることは多々あります。

 逆の立場になって考えても、これは言えます。お願いごとをされたら誰しも無碍に断るとは限りません。一応検討はしますし、頼まれたら相手の期待に応えたいとも思います。また、自分の力が人の役に立てば、嬉しいことです。「将来的な見返り」だけで判断するとは限りません。

 経営者のような社会的責任のある人が、私のお願いごとを引きうけてくださるのは、決して「将来的な見返り」を求めておられるとは、どう考えても思えません。なんせ、将来的にもお返しできない可能性の方が高いと考える方が自然ですから。

 多くの人は、将来的なギブを期待して、ギブしてくれる訳ではないのです。

 ただし、お願いごとをするにもいくつかコツと礼儀があります。