3年ぶりに出版したハーバード・ビジネス・レビューの別冊。「人材と教育の未来」をテーマにしたこの別冊では、IT技術と教育との不思議な相性を感じる。
IT技術と教育は相性がいい
先日ハーバード・ビジネス・レビューの別冊を出しましたが、実に3年ぶりとなります。テーマは「人材と教育の未来」で、いま最も注目すべき分野の一つだからです。
技術が変わると、人のスキルも変わる。自動車のない時代には乗馬の技術が求められましたが、それがやがて運転技術へ。その後、自動車自体もマニュアル車からオートマチック車へと変わり、いまでは自動運転技術が実用段階へと進んでいます。
このIT技術の進展により、今後多くのスキルセットが転換期を迎えることになりそうです。昨年もオックスフォード大学のオズボーン准教授が、アメリカ雇用者の仕事のうち47%が10年~20年の間になくなるという予測を出し大きな反響を呼びました。
またIT技術によりグローバル化の進展もあります。ネットワークで世界が繋がったいま、われわれは「社会」という言葉を再定義する必要があります。そもそも狭義の意味で「社会」は地域のことを意味し、広義には自立した個人が関わり合う場を意味しました。それがいまつながる世界では、物理的に閉じた社会の存在が希薄になりました。日本のどこに住みどのような仕事をしようと、「世界」が社会になる時代となったのです。
技術と社会が変わると人に求められる資質が変わる。幸いなことに教育の変化に対するツールは整いつつあります。それは、IT技術の特性と教育との相性がいいからです。そもそも教育とは、知識や技能の伝達であり、学習は新しい知見の習得です。そして、デジタル化がもっとも得意とするのは知識分野ではないでしょうか。文字化された知識はすでにデジタルで完全に表現することができます。この知識の伝達にデジタル・ネットワークの技術が多大な効果を発揮します。IT技術が教育分野に変化を促す一方で、教育の改革にIT技術が効果を発揮する。両者の不思議な相性を感じます。