DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの最新号では、経営者に絵を描いてもらう新連載がスタートした。この企画の背景は、普段インタビューをするなかで、その限界を超える何かができないかという想いがあった。

 

普段のインタビューで心がけていること

 インタビューをしていて「やった」と思える瞬間は、相手から想像以上の言葉を聞けた時です。準備はその一点のために行っていると言っても過言ではありません。

 普通、経営者などにインタビューを申し込む際には、テーマとともに質問項目を提出します。質問項目を作るには、その経営者が過去に発言していた記事や書籍など、あらゆる情報を集めて読み込みます。これらを読むと、その人がどのような考えでどのような発言をされてきたかがわかりますが、インタビューで過去に出てきた話しか引き出せなかったら、インタビューアーとして敗北感を味わいます。ですから、事前に調べつくした上で、これまで語られなかったsomething newをいかに引き出せるか。これを目指すのです。ただ、語られたことは調べることができても、語られておらずかつ、価値あるその方の言葉は未知なるもの。事前にそれが何なのかはわかりません。

 インタビュー本番では、事前の質問項目に沿って質問を開始します。ただこちらは、事前に綿密に作成したシナリオをいったん忘れ、とにかくそこで語られる相手の言葉に全神経を集中します。そして相手の言葉から、自然に浮かんだ疑問を質問していきます。こうなると事前の質問項目から離れてしまいますが、まず相手も乗ってきてくれるものです。

 こんなやりとりから、相手から素晴らしい言葉を聞かせていただくことがあります。その瞬間は、感動すら味わえるものです。

 このようなインタビューでのやり取りは、日ごろの会話にも相通じるところがあります。だれかと話していて、相手の言葉からひらめいて、いままで考えていなかったような思考が生まれて言葉にできたり、よく知る相手の思わぬ一面を知ることができたりなどです。かように対話は話し手と聞き手との共創作業ではないでしょうか。インタビューや対話の面白さはそこにあるような気がします。