最近出版された『フィログラフィックス』は、読むのは30分以内だが、実に多くの想像力を刺激する本である。哲学をデザインする、というコンセプトの本書は、インフォグラフィックスが目指す究極の姿への挑戦である。
ビジュアルで抽象概念を表現できるか
読むのに時間がかかる本と、そうでない本があります。この本『フィログラフィックス』は明らかに後者。なんせ半分ビジュアルで活字は1頁に数行なので、「読む」時間はおそらく30分かからないでしょう。ところが、読んだ後に思考の時間が拡張する本です。
「読む」というより、「見る」あるいは「眺める」という動詞がふさわしいでしょう。書名は『フィログラフィックス』。哲学を意味する「フィロ」に、「グラフィックス」をつけた造語のよう。本書では主義を表す哲学用語を、それぞれ1枚のグラフィックスで表現したものです。
本は正方形で左ページに用語とその簡単な解説、右ページにその言葉を表すグラフィックスが掲載されています。決定論、唯物主義などの95の言葉が取り上げられています。まえがきとあとがき以外、解説はなし。
たとえば、「懐疑主義」という言葉は、「何が基本的原理とみなされるか精査する際に、疑念を用いる方法」と解説されており、右ページにはやや深めのエメラルドグリーンの上に、左下から右上に向かってエンジ色に近い赤の太目の直線が引かれたグラフィックが出ています。(グラフィックを言葉で説明するのは、難しいので、写真を掲載します)
これと同じパターンで、観念主義、構造主義、ヒューマニズム、唯物主観、など95に及ぶ哲学用語が取り上げられています。