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リーン・スタートアップの考えを援用する
企業はほぼ例外なくイノベーションを試みているはずだが、秩序立てて着実に実践している例は数えるほどしかない。たいていの組織では、素晴らしいブレークスルーは瓢箪から駒のようにして生まれる。イノベーションが成功するまでの道のりはよく見えず、個人の英雄的な活躍や数々の幸運な出会いが欠かせない。イノベーションの活性化を目指して、ハッカソン、創意に満ちた着想への報奨金、臨時タスクフォースなど、次々と施策を打ち出しても、その多くは成果につながらない。従業員は素晴らしいアイデアを胸の内にしまったままにし、イノベーション施策には気が遠くなるような時間がかかる。しかも、構想がまとまったとしても、最大限の努力がなされたり、戦略上の優先課題にうまく適合したりするとは限らない。
経営幹部の大半は、イノベーションへの取り組みが思うように進んでいない実情を、率直に認めるだろう。もっとも、多数のイノベーション案件の遂行を一つの職能分野として位置づけ、安定的にしかも大がかりに行うのは、とてつもない大仕事のように感じられる。そのうえ多くの場合、新たな組織体制、人材の採用、多額の投資が欠かせない。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が2000年代初めに設けた「イノベーション工場」のようなものが必要になるのだ。
我々はこの10年間、世界各地の組織の革新性向上を支援してきた。そしてその経験から、場当たり的なイノベーションとも、綿密な計画に従って大規模なイノベーション工場を設ける方法とも異なる、言わば折衷案のような第3の道があると気づいた。必要最低限の実用的なイノベーション体制(MVIS: Minimum Viable Innovation System)を設ける方法である。