顧客ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短縮化、グローバル化による競争構造の変化など、モノづくりに対する要求は高まり続けているが、従来のようにR&Dを自社で完結する自前主義に固執しては、そうした変化に対応することはできない。そこで注目を浴びるのが、「オープン・イノベーション」である。外部の優れた技術を取り入れることで、R&Dのスピードアップのみならず、コストの最適化まで実現する考え方だ。オープン・イノベーションを実施するためには、協働先とウイン-ウインの関係を築き、選ばれる存在になることが不可欠である。本稿では、オープン・イノベーションの基本理解はもちろん、選ばれる企業に生まれ変わるための条件までを論じる。

世界中で広がりを見せる
オープン・イノベーション

 2010年、フィリップスは、油を使わずに揚げ物ができる「ノンフライヤー」の販売を開始した。全世界で約320万台[注1]、1000億円近くを売り上げる大ヒットとなるが、これにオランダの中小企業の技術が採用されていることはあまり知られていない。

 フィリップスの担当者は「オープン・イノベーションを使わなければ、ノンフライヤーの製品化にあと1年要していたはずだ」と語る。1000億円近い売上げを1年早く計上できるインパクトを考えてほしい。キャッシュインの早期化はもちろん、製品化の前倒しでリソースを次の開発に振り分けられること、競合に先駆けて市場に投入する先行者利益が大きいことなどを容易に想像できるはずだ。