プロダクトマネージャー、メディアプランナー、リサーチャー……同じ人に届けたかったはずなのに、それぞれの役割で仕事を進めるうちに、いつの間にか別の人を対象としていることがよくある。ターゲティングを一貫させ、それをマーケティングプロセスに落とし込むにはどうすればよいか。グーグルで現在進行中の実験を紹介する。好評連載、第6回。

 

そのターゲティングは実態に即しているか?

ここまでの連載では、生活者をどのように理解すべきか、そして、生活者にどのような変化が起こっているかを解説してきた。しかし、せっかく把握できた生活者像も、日々のマーケティング活動に活かせなければ意味がない。そこで、今回はマーケティングの起点となる「ターゲティングとは?」を考える。何を今さらと思われる方もいるかもしれない。しかし、ぜひ、ここで一度問いかけてもらいたい。「そのターゲティングは本当に正しいのか?」と。

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佐藤 祐之(さとう・よしゆき)
グーグル株式会社ビジネスマーケティング部マネージャー。ウェブテクノロジーによる広告領域の発展を目標に、企画・投資効果可視化・メディア開発等に携わるグーグル広告部門のマーケティング担当。大学では会計学を専攻しつつ、ウェブコンサル事業に参画し、ネット領域を学ぶ。その後、広告会社に所属し、主に日本国内の日用品マーケティング業務を経て、バンコクにてアセアン域のマーケティング業務に従事。2010年グーグル入社。

 普段、私たちはさまざまな立場の人々と仕事をするなかで、ターゲティングという言葉の持つ意味が、実は一様ではないと気づかされる。例えば、プロダクトマネージャーにとっては、担当するブロダクト・サービスの想定顧客であり、広告戦略担当にとっては、その商材を使ってもらいたい新規ユーザーかもしれない。また、メディアプランナーにとってはF1やM1といったメディアオーディエンスを指すだろう。同じ人に届けたかったはずなのに、いつの間にか別の人を対象としているのである。

 それは、それぞれの立場で作られるターゲットが、「実態として存在する人々」の集合体ではないからだ。つまり、プロダクトマネージャーは売り上げ目標から、メディアプランナーはリーチ目標から逆算し、ターゲットを想定している。それぞれの立場で「必要な数」を満たすべく異なる調査を行うため、凡庸なターゲット設定となり、かつ、関係者の間での一貫性が失われる。

 そこで私たちは、どうすればターゲティングを一貫させ、よりよいマーケティングができるか、自ら挑戦してみることにした。