リーダーシップ論の大家ジョン・コッターの新刊、『ジョン・P・コッター 実行する組織』では、既存の大企業が俊敏な企業に変われる現実的な解を示した。いまある良質な仕組みは残し、変えるべきところは変える。掛け声だけで終わらない、組織変革の教科書と言える。

 

組織変革は永遠のテーマである

 マネジメントの世界には流行り廃りがあります。バズワードなどと揶揄されますが、1990年代にもてはやされた「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」は、いまやその陰もありません。昨今喧伝されているビッグデータやIoTも、それ自体が当たり前となる時代になると、論点にはならなくなるでしょう。

 その一方で永遠のテーマとも言えるものがあります。いつの時代であろうと、どんな組織も抱えるテーマであり、その代表とも言えるのが「組織変革」です。

 組織は生き物なので、固定化された理想像は存在しない。言い換えれば、絶えず変化する組織が理想の組織なのかもしれません。一方で組織には慣性が働きます。それは出来上がった事業が社会のインフラとなり、毎日同じレベルの質で提供することを強いられるからです。

 事業を生み出した企業は、その事業の永続的な運営を繰り返すことで、組織の慣性が強まる。つまり、硬直化の道を歩む宿命が宿っているのです。

 組織の変革が進みづらいのはある種のパラドクスですが、それでも組織の変革は必要です。そしてそれが、時代を超えたテーマとなっています。

 とりわけ大企業にとって組織変革の問題は高まります。組織が大きくなればなるほど、そして刻んできた歴史が長ければ長いほど、その重要性と困難さが増すからです。