俊敏性の欠如を解決する、新しい調査手法

 このようなマーケターの切実なニーズに対して、デジタルテクノロジーの進化はその答えを少しずつ提示しつつある。

 例えば現在、グーグル にはブランド効果測定(以下 BrandLift)や米国で提供を開始している Google Consumer Survey(以下GCS)と呼ばれる新しいアンケート調査の手法がある。これは、調査協力パネルを利用しない従来と異なるアンケート手法だ。

 BrandLiftはユーチューブの動画を視聴するユーザーに対しアンケートを表示し、回答すると動画が再生される仕組みだ。GCSでは、ニュースサイトやエンターテイメントサイトなどユーザーにとって魅力的なコンテンツを提供する媒体社と協力しアンケートを表示する。魅力的なコンテンツは有料会員になるか、無料のまま制限内でコンテンツを利用することが多い。しかし、GCSにより、ユーザーはアンケートに回答することで無料のまま魅力的なコンテンツを楽しめ、コンテンツを提供する媒体社はアンケート表示を通じた収益を得ることができる。Brand Lift や GCS にはパネルサイズという制限がなく、ユーチューブの動画やサイト上のコンテンツを楽しむ数千万人のユーザーからアンケートを集めることができるのだ。

 最大の利点は、どんなに粒度の細かい仮説でも検証できるようになる点だ。例えば、チャネル別、クリエイティブ別、露出回数別、あるいはターゲット別に施策を評価できる。パネル型アンケートでは十分なサンプルサイズが確保できない仮説でも、Brand Lift や GCS を利用すれば検証することも可能となる。さらに、マーケターはリアルタイムにアンケート結果を得られ、キャンペーンの終了を待つ必要もない。何度アンケートを繰り返してもサンプルの枯渇を心配することなく、キャンペーン中に継続して検証できる。調査費用も、Brand Liftは広告主であれば無料で利用でき、GCS は従来のアンケート調査に比べて割安で実施できる。

 このように、デジタルテクノロジーによるダイナミックなマーケティングの効果検証に関する新たな課題は、同じくデジタルテクノロジーの活用により解決されていく段階となっている。