「嘘偽りのない」態度が人々を動かす

 営業担当バイス・プレジデントのキャロルは──私の複数のクライアントを合成した架空の人物である──全社的な営業会議で、演台にカツカツと歩み寄り、聴衆をしばし見回すと、自分が一介の営業担当者だった頃について話し始めた。

 そこから巧みに話題を変えて、今年度の売上高について明るい見通しを述べ、カラフルなスライドを見せながら、安定した成長、期待の新製品について説明した。とりわけ新製品については、身振り手振りを交えつつ強調した。

 キャロルは、気の置けない同僚たちを前に入念なリハーサルをしており、その際、みんな彼女のメッセージと熱い思いに感じ入っていた。それゆえ、キャロルは自信満々だった。

 スピーチを締めくくるに当たって、ステージの端まで歩み出て、会場全体を見渡し、売上げのストレッチ・ゴールを達成すれば、たくさんの人が年間優秀者として表彰されると、聴衆にはっぱをかけた。

 ところがこの瞬間、何かしっくりこないものを感じた。会場は、幸先よく新年度のスタートを切るべく、やる気に満ちあふれているといった様子ではない。彼女は当惑した。「どうしたことでしょう。この場をどう取りなせばいいのかしら──」

 このキャロルのような話を耳にしたことがおありだろう。あなた自身、彼女のような経験があるのではなかろうか。また、このようなスピーチを聞かされたこともあるはずだ。そう、話し手に何の問題はないのだが、はっきり言えないけれども、何か違和感があるというプレゼンテーションである。