過去最多! スプレーを多用して色を重ねていく
鑑賞ワークが終わり、次はいよいよ描くワークショップの始まりです。画材の使い方などをひと通り解説し、「働くうえで大切にしていること」という絵のテーマが発表されました。
「今日は物体を描くのではなく、見えない自分の想いを表現してもらいます」というKUNIさんの言葉に、斉藤さんが思わず苦笑い。これまで、学校の授業などで物を描くことはあっても、「想い」を絵にするという経験はない人が多いのでは。やったことがないことはハードルが高く思えますが、KUNIさんは「想いは、実物や人と較べて違うということもないし、むしろ自由に楽しく描けるものですよ」と背中を押しました。
まずはワークシートに、「働くうえで大切にしていること」を文章で書き出します。シートを見て御手洗さんは「先に文字で書くんですね。今書くんですか……」と言いながら、窓の外を見ながらぼんやり考え、ペンを手に取りました。
その後は、絵を描く紙を12色の画用紙から選びます。御手洗さんと斉藤さんは同時に黄緑を手に取り、御手洗さんからは「私もそれにしようと思ってたのに!(笑)」という言葉が。そこから2人が考え始めるなか、宮井さんは迷わず赤の紙を手にして、「弊社のカラーですから」と一言。最終的に斉藤さんは水色の紙、御手洗さんは初志貫徹で黄緑の紙にしました。
席に戻り、御手洗さんは右下に黄色のアーチ、次に左下に黄緑のアーチと、四隅に色を重ね始めました。ざーっ、ざーっと広い範囲を塗っていきます。宮井さんは、白で大きな半円を2つ描き始めました。ハートのマークにも見える線を、赤地に白色は出にくいのですが、力強い筆致でくっきりと描いていきます。斉藤さんは画材のパステルをとりあえず全部ケースから出して、紙を見つめています。しばらくしてから、右側にオレンジ色を大きく塗り始めました。
外は強い風が吹き、窓から見える木が大きくなびいています。でも室内は風の音もなく、しんと静か。3人は黙々とパステルと指だけで作品をかたちにしていきます。
20分くらいしたところで、御手洗さんが手を挙げて、「質問です! 色を重ねたら、混ざって濁ってしまいました」とKUNIさんに声をかけました。そこで、出てきたのがスプレー。糊のような成分で薄くコーティングすることで、上から重ねた色が混ざらなくなるのです。「明るい色をのせたかったのに、ぐちゃぐちゃになってしまってどうしようかと。でもスプレーしたらきれいな色が出た! あーよかった」(御手洗さん)
そこから、なんと計5回のスプレーがけをした御手洗さん。これは、この「リーダーは『描く』」連載のなかでも史上最多となります。
開始30分くらいで斉藤さんは「めっちゃ暑くなってきた。朦朧としてきました……」とのこと。どうやら絵を描いている間、息を詰めているようです。水を飲み、一息入れて、また集中して描き始めました。
向かいの宮井さんは淡々と、たくさんの要素を絵に詰め込んでいます。絵を回し、描き、また回す。それを繰り返したのち、「よし、できた」と完成したようです。
1時間ほどで全員が描き終わり、絵を額に入れました。宮井さんは額に入った自分の絵を見て「おお、素敵」とつぶやき、御手洗さんもそれをのぞき込みに行きます。