上記の10項目すべてについて、正確に調査するのはたやすくないだろう。しかし投資家は、これらの項目をインタビューや観察、アンケート、レポートに含めれば、企業価値を総合的に把握する能力は劇的に高まるはずだ。株式投資家(ベンチャーキャピタリストやプライベートエクイティ、ポートフォリオマネジャー、ミューチュアルファンドやヘッジファンドのマネジャーなど)はこの指数を使えば、従来の財務実績および無形価値の分析を補完でき、企業の総合的な市場価値をより厳密に把握できる。債権者は、企業の返済能力をより正確に知ることになる。格付け機関(ISS、政府関連機関、ムーディーズなど)もリーダーシップを格付けのプロセスに含めれば、企業の総合的な価値をより精密に評価できる。

 企業の取締役会は経営陣を評価する際に、リーダーシップ・キャピタル指数を用いればより綿密な評価プロセスを踏むことができる。企業価値に対して一番の責任を負う最高経営幹部は、自社の価値を論じる際にリーダーシップを考慮するようになる。リーダーシップの育成を担う専門家は、リーダーの個人的特性にばかり焦点を当てるのではなく、投資家がリーダーをどう見るかを重視することになる。

 リーダーシップの市場価値評価が確立されれば、組織のさまざまなプロセスにも大きな影響が及ぶ可能性がある。たとえばリスク管理、ガバナンス、社会的責任、評判管理、リーダーシップ育成などのプロセスは、より厳密で秩序立ったリーダーシップ評価を行うという目的の下に改善されるかもしれない。

 直感的かつ限定的なリーダーシップ評価から脱却し、無形価値の創造におけるリーダーの影響力を測る指数を取り入れれば、リーダーシップの評価および育成のあり方が一変する。この指数によって、投資家その他による企業評価の方法は向上するだろう。リーダーシップ・キャピタルが投資判断の材料になれば、当然ながら企業の日々の業務においてもそれが重視され、多くの人々のメリットにつながる。投資家やその他の人々も、今こそリーダーシップ・キャピタル指数を活用すべきなのだ。


HBR.ORG原文:Calculating the Market Value of Leadership April 03, 2015

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アラン・フリード(Allan Freed)
RBLグループのプリンシパル・コンサルタント。

デイビッド・ウルリッチ(Dave Ulrich)
ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのレンシス・リッカート記念ビジネス講座教授。RBLグループのパートナー。人材活用の分野で多くの実績と著作があり、「経営思想家トップ50」にも選ばれている。