2番手だからこそ、市場は切り開ける

『競争の戦略』『ブルー・オーシャン戦略』のような定番書の視点が参考になるのはもちろんだが、それらには無い本書の特徴は、何といっても日本企業の事例の豊富さであろう。著者の山田英夫氏は経営戦略が専門で、『異業種に学ぶビジネスモデル』を始め、企業のビジネスモデルに着目した書籍も多い。本書でも50社以上の企業を取り上げ分析することで、競争しない3つの選択である「ニッチ戦略」「不協和戦略」「協調戦略」の意味するところが、現実のビジネスと結びつけて理解しやすくなっている。

 なかでもとりわけ興味深いのは「不協和戦略」ではないだろうか。業界のリーダー企業は経営資源も豊富で、下位企業が立ち向かうことは困難なように思われる。しかし、経営資源を「持っている優位性」が逆に戦略遂行の足かせになることも多いという。投資規模が大きいが故に事業の方向転換が困難になったり(BtoBがメインの花屋は青山フラワーマーケットのような店舗を展開しにくい)、ライバル企業が打ち出してきたサービスが、既にある自社の製品・サービスと共食い関係にあるため追随できなかったり(既存のジムは簡易フィットネス・ジムのカーブスのような形態に進出しにくい)、ということもある。2番手以降の身軽さゆえに、新たな市場を切り開きやすくなるのだ。

 リーダーではない多くの企業が、消耗戦から脱する道標となることはもちろん、プレーヤーが激しく入れ替わる時代、リーダー企業への示唆にも富む1冊である。