営業活動へのインセンティブを売上げではなく利益に連動させれば、企業はより利益率の高い成長が見込める。そのための報酬設計で考慮すべき6つのポイントについて、世界最大級の営業コンサルティング会社ZSアソシエイツの創設者らが解説する。
たいていの営業部門では、営業担当者の給与の一部を販売実績に連動させている。たとえば、売上げに応じた歩合給を支給したり、担当地域の販売ノルマを達成したらボーナスを出したりする。こうした成果主義の効果は実証済みであり、営業担当者の労働意欲を高め販売業績を押し上げる。
だが昨今の企業は、営業担当者にたんなる売上げではなく、「利益率の高い売上げ」を増やすことを求めるようになっている。インセンティブを売上高ではなく利益に関連づければ、営業担当者の取り組みを会社の利益目標と連動させることができる、という理論だ。
たとえば、ある工業用潤滑油の販売代理店では、売上げではなく粗利益に対する歩合制を導入したところ、会社の意図が営業部に明確に伝わり、即座に結果が出た。営業担当者は値引き率を抑え、より利益率の高い製品の販売に注力したので、粗利益が増えたのである。その一方で、ある医療機器メーカーが歩合給の対象を売上げから粗利益へと変更したケースでは、違う結果となった。製品原価や物流費、製品ごとのリベートやセット販売へのリベートが絶えず変化するために、担当地域ごとの粗利益を測るのがきわめて困難になったのである。そして、わずか3ヵ月での廃止を余儀なくされた。
利益に連動した報酬制度を導入すべきか検討する際には、まず以下の2つの問いについて考えてみよう。
1.利益率の重視は自社の戦略に合致しているだろうか?
企業は時に、利益率を犠牲にすることもある。マーケットシェアの拡大、競合企業への対抗、新規市場への参入などが理由だ。利益率に応じた営業報酬を検討するのは、利益率の向上が戦略目標である場合のみとすべきである。
2.営業担当者が利益率をコントロールできるだろうか?
1種類の商品を定価で販売する営業担当者は、粗利益をコントロールすることができない。利益を増やす唯一の方法は、販売数をひたすら増やすことである。この場合、利益率ベースで報酬を決めるメリットはない。売上げに応じた報酬と同じ結果になるからだ。営業担当者が粗利益に影響を与えることができるのは、①価格を変えられる場合、②利益率が異なる複数の商品を販売している場合である。少なくともいずれかの条件に該当しない限り、利益率ベースの営業報酬は意味がない。