米国統合特殊作戦部隊の元司令官から民間に転身した、スタンリー・マクリスタルがリーダーシップについて語る。どんな場合もリーダーにとって重要なのは、信頼だという。その上で、民間企業のリーダーならではの難しさも言及する。
 

チームビルディングのカギは信頼

 米軍の最高機密作戦を実行する統合特殊作戦部隊(JSOC)。陸軍(アーミーレンジャー、デルタフォース)や海軍(ネイビーシールズ)から精鋭中の精鋭が集まる部隊だ。

 スタンリー・マクリスタル将軍がその司令官に就任したのは2003年のこと。当時、イラクでは伝統的な戦術が機能しなくなっていた。マクリスタルは性格の異なる精鋭部隊を束ねて、アルカイダを倒す新しい方法を見つける必要があった。

 その後、アフガニスタン駐留米軍司令官となっていたマクリスタルは、2010年に『ローリング・ストーン』誌にオバマ政権を批判する談話が掲載されたことから、突然辞任を余儀なくされた。だ。軍を離れたマクリスタルは、イェール大学でリーダーシップを教える一方で、コンサルティング会社クロスリード(CrossLead)を設立。今年5月には共著『チーム・オブ・チームズ(Team of Teams)』が刊行された。

 このなかでマクリスタルは、イラクとアフガニスタンで学んだことを語るとともに、スポーツや航空、緊急医療などの分野におけるチームビルディングの好例を示している。企業は軍からどんなことを学べるのか、マクリスタルに話を聞いた。

――あなたが入隊した1970年代半ばと、アフガニスタン駐留米軍司令官に就任した2000年代では、米軍のチームビルディングは変わりましたか。

 私がグリーンベレーとして特殊部隊に配属されたとき、すでに20人くらいの小さなチームで非常にうまく作戦をこなしていました。

 チーム内には1本の指揮系統と、任務外での多くの人間関係が築かれていました。いつも仲間の言葉に耳を傾け、仲間の行動を至近距離で見ていると、自然にお互いに親しみがわき、深く理解しあうようになるものです。それは、魔法のようなプロセスです。こうしたインフォーマルな交流が豊かであるほど、作戦中、ちらっと目を見ただけで連携した動きができるようになるのです。

――優秀なチームのカギは「信頼」だとお話しされていますが、信頼をスピーディーに築く方法はありますか。

 信頼を築くには時間がかかります。しかし、これはチームの話であって、個人的に親しくならなければならないということではありません。特定の部分で信頼を築けばいいのです。

 例えばクルマを運転中にお腹が空いてきたなと思ったら、ちょうどマクドナルドの看板が見えたので立ち寄ることにした、という場合。それはマクドナルドをある程度信頼している証拠です。その店舗に行ったことはなくても構わない。同じように、チームで築いた信頼は(同じようなチームやメンバーに)転用できるのです。

 例えばあなたがネイビーシールズの隊員で、私がデルタフォースの隊員だとします。私はあなたを個人的には知らないが、私はシールズに知り合いがいて、彼らがどう動くか体験的に知っている。彼らが私に何を期待しているかも知っているし、あなたも私に何を期待されているかわかります。私はあなたの組織の価値観と実績を信頼していて、その組織に正式に認められたメンバーであるなら、あなたのことも信頼できるのです。……(ただ)こうなるには、その組織の人間と関わった経験が一定量必要となります。