レーズンパン人材は
「社会的価値」と「戦略」で惹き付ける
次に問題となるのがキャスティング、つまり、いかにして主役となるレーズンパン人材を採用するかである。そのためには脚本が重要となり、このフレームワークが人工知能“劇場”と名付けている所以でもある。
以下、人工知能“劇場”の脚本執筆のためのフレームワークを紹介する。
経済界にも科学界にも精通したレーズンパン人材に魅力的な脚本を執筆するためには、「社会的価値」と「戦略」の明確化が重要であると私は考えている。
社会的価値とは、従来はなかった新しいサービスを人工知能を通じて提供し、自社でしかできないユニークな機械学習や人工知能を通じて社会を豊かにすることである。それを伝えられれば、キャスティングの成功確率はぐっと高まる。
実際、私がいるRITでは、社会的価値の高いビジネスドメインでデジタル化に成功していることを打ち出して、日本国内にとどまらず、世界中から機械学習の権威の協力を仰いだ。シリコンバレーに新設する研究所のトップに、データマネジメントと人工知能の世界的な権威であるアロン・ハルヴィーを招聘できたのは、それが大きな理由の一つだと考えている。
戦略を固めるうえで起点となるのが、差別化された自社データのユニーク性だ。どんなデータを分析できるかはレーズンパン人材にとって非常に重要な要素となるため、必ずここを整理したい。ただし、どれほどユニークなデータであっても、実現したい人工知能を開発するには十分ではないことが常である。そのため不足するデータをどのように補うのか、提携プランをきちんと整理することも必要である。
こうして社会的価値と戦略を明確にしたうえで、実際のキャスティング(採用)を行なう。まずは、自社データで差別化されていると説明する。人工知能の導入が遅れている周辺市場を逆に破壊するようなプランを提示し、希少性の高いデータが獲得できるので先進市場のプレーヤーといっそうの差別化が可能だと説明ができると、より魅力的に感じられるであろう。
人工知能“劇場”は、脚本とキャスティングが生命線を分ける。人工知能が未導入の企業では、本フレームワークを活用した脚本執筆とキャスティングに挑戦してほしい。
次回更新は12月4日(金)を予定。