思考の深化と飛躍をどう両立させるか
先日、ある企画がまとまらず苦労していました。必要と思われる情報を集めてみても企画の切り口が思い浮かばない。集めた情報だけでは足りないのかと思っても、次に探すべき情報が見当たらない。おそらく情報が足りないのでしょう。頭の中の情報がつなげられず、一つのかたちにならず、それぞれが中途半端です。しかも他にやるべきことがあり、考えている時間も多くとれず、焦ると集中できない。
思い切って外出の予定の30分前に会社を出て、知人が手伝っているお花屋さんを覗きに行きました。ここはアフリカの花を売るお店で、フェアトレードを掲げています。その名も「アフリカの花屋」というお店で、売られているお花はどれも非常に色鮮やかです。その上、お店の人に聞くと、生命力が強いらしく普通のお花より長持ちするそうです。アフリカの大地が頭に浮かび、大柄なお花の模様と一つひとつの花びらから、確かに生命力が伝わってきます。そしてその色の鮮やかさと生命力が一緒になった、そのお花にすっかり魅了されました。2つのことを繋げて、お花の新たな世界観が表現されたのです。
その後、社外での用事を済ませ会社に戻り、企画の構成を考え直したら見事につながりました。お花屋さんに行ったことと、企画が完成したことの因果関係は証明できませんが、視野が広がった実感はあります。僕が仕事で扱うテーマは、経営であり企業組織でありビジネスですので、お花との関連は少ない。しかし編集という作業とお花の特性から生まれている「表現」には関連があったのです。
以前、プレゼンテーションの構成に悩んでいた時、コース料理を食べたことで見つかったことがあります。それは、順番に運ばれてくる料理と料理の関連性と意外な展開に納得し、順を追うごとにお店がやりたいことが理解できたからでした。
仕事で重要なのは集中すること。課題に対して本質的な洞察を得るために深く考えること。一方で、集中の方向がテーマの深化に偏りすぎないことも重要です。テーマを遠くから離れて見ることで課題の周囲にあるものが見える。あるいは周囲にないものにはたと気づく。つながらなかった点と点に、異質なものを入れると補助線となってつながりが生まれる。
こういう効果が得られると、仕事から離れる時間の価値を再認識できます。気をつけたいのは、「離れる」を「逃げる」言い訳に使わないこと。理想は、思考を深化させることに妥協せず、飛び地の知恵を取り込むことです。(編集長・岩佐文夫)