フルタイム勤務に縛られず、個人事業主として複数の企業や仕事に関わる柔軟な働き方が、米国で増えている。HBSのアンドレイ・ハジウ准教授は、この潮流を歓迎すべきものして数々のメリットを示す。

 

 1つの組織にフルタイムの正社員として勤める、というこれまで一般的だった労働形態は、いまやそのメリットを失っている。景気が変動するたびに多大な不安定性を生み、従業員と企業の双方にかなりの経済的負担を強いている。

 我々は米国における労働形態について、次のような明快な展望を持っている。

 これからほとんどの人は、特定の企業に所属しないインディペンデント・コントラクター(個人事業主、独立請負人)となり、柔軟な働き方をするようになる。同時期に複数の組織の仕事をパートタイムで請け負うこともできる。あるいは1年間で複数の企業にまたがって、短期間のフルタイム業務をいくつかこなしてもいい。企業がフルタイムで維持する人員は、経営幹部、核となるマネジャー、プロフェッショナル人材を含む最低限の人数のみ。それ以外の人材は必要に応じて、的を絞った柔軟かつ計画的な方法で雇うようになる。

 いま、このようにフレキシブルな働き方が望ましい要因は2つある。第1の要因は社会的価値観だ。ワークライフバランス、そして家庭を犠牲にしないスケジュール管理は、今日のビジネスパーソンにとっていっそう重要性を増しており、企業側の姿勢も次第に協力的になっている。第2の要因はテクノロジーである。過去5年におけるテクノロジーの進歩により、遠隔地からの労働や協働が格段に容易となったうえに、企業と請負人はお互いをすぐに見つけられるようになった。これを可能にしているのは以下のようなものだ。

・ブロードバンド接続の普及
・ドロップボックスやエバーノートのような、コラボレーションツール
・スカイプやグーグル・ハングアウトのようなコミュニケーションサービスの、絶え間ない発展
・経験豊富な有能人材の需要と供給を、迅速かつ正確にマッチングする、ソフトウェア主導型の人材マーケットプレイス。アワリーナード(HourlyNerd:コンサルティング)、アップカウンセル(UpCounsel:法務)、ビハンス(Behance:クリエイティブ)などが例

 優秀な人材の才能を“オンデマンド”のように購入するモデルを、投資家マーク・キューバンは「才能のスポット市場」と呼ぶ。そして米国の主要企業は、高まる人材ニーズに対処するためにこれを活用していくと我々は見込んでいる。

 この動きは、一部ではすでに現実化している。コンサルティングを格安で提供するアワリーナードには、複雑な案件も寄せられるが、その多くは依頼から交渉を経て完了するまでに、24~48時間しか要していない。最近のプロジェクトの例としては、ゼネラル・エレクトリック(GE)やステープルズ(オフィス用品チェーン)の他、多数のフォーチュン1000企業のものがある。また扱う分野は、マーケティングから戦略、人事、オペレーションまで幅広い。サービス提供の限界費用が非常に小さいため、中小規模の事業主でも利用できる。