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アニメーション制作は一人で完結できるものではない。ましてや、ピクサー・アニメーション・スタジオのように世界中に配給される大作をつくる場合、一つの作品で200~300人規模の関係者が携わることもある。同社でアートディレクターを務め、『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』を担当したのが、堤大介氏である。一人ひとりが強烈な想いを抱えるクリエイター集団を取りまとめ、彼らの力を最大限に引き出すために、リーダーは何をすべきなのか。ピクサーでの豊富な経験から導かれた3つの教訓、そして、チームが失敗できる環境をつくるリーダーシップの重要性が語られる。
人を育てるために、
チームを信頼して仕事を任せる
私は、高校卒業後に渡米してイラストを学び、1998年からコンセプトアーティストとして働き始めた。そして2007年から2013年まではピクサー・アニメーション・スタジオ(以下ピクサー)に在籍し、アニメーション映画で作品全体の色彩と照明効果を統括するアートディレクターを務めた。
アニメーション映画は、けっして一人でつくり上げることはできない。当然、チーム作業ならではの難しさはある。特にピクサーでは一つの作品に200人以上が携わっており、制作段階では仲間との円滑なコミュニケーションを実現し、彼らを巻き込むリーダーシップが常に必要とされた。一方で、『トイ・ストーリー3』などの作品で納得の仕事ができたのはチームワークの力にほかならず、また、作品が完成した時の感動や満足感を分かち合うことができるのは、チームの醍醐味ともいえる。
アニメーションに限らず、クリエイティブの世界では一般に、制作面で才能を発揮した人材がそのままリーダーを任される傾向がある。ただ、彼らが優れたリーダーになれるとは限らない。何でも自分一人でこなせてしまうために、部下に仕事を任せられないケースはよく見かける。クリエイターとしての才能や技術と、リーダーとしての力量は別物なのである。