DHBRの最新号の特集は「人を巻き込む技術」 。どれだけ優秀な人でも、できる仕事量は限られる。一方で、力のある人を巻き込むことができれば、何倍もの大きな仕事ができる。いまプロフェッショナルに必要な力である。

 

一流の経営者は、一流の人づかい

 プロフェッショナルとしての最初の成長は、できることが増えることです。料理人が下ごしらえから盛り付けまで任されるように、自分ひとりでできる仕事が増えていくことが成長です。「できる人」とはまさに、多くの仕事ができる人なのです。

 その一方で、組織で働くためには、もう一方のスキルを磨く必要があります。それが「人を動かす力」です。どれだけ「できる人」になっても、自分ひとりでできることは限られています。辣腕のセールスとして成功した人も、チームを任されて思うような成績を上げられない人がいます。また、複数の職種の人と一緒に作り上げる仕事をする場合は、他のプロフェッショナルにいかに力を発揮してもらうかが成功のカギとなります。組織のリーダーはもちろん、一人前になったビジネスパーソンに求められる次なるスキルが「人を動かす力」です。

 私は、書籍編集をしていた頃、経営者が書かれた本を多く担当しました。著者が社会的に地位の高い人だと、編集者はさぞ気を遣い大変労力がいるのではないか、とよく聞かれました。しかし、実際はむしろ逆でした。経営者の方との仕事ほど、楽しいものはありません。それは、彼らが相手を「動かす力」があるからでした。著者と編集者との関係は上司部下ではありません。むしろ、役割の異なるパートナーの関係です。経営者は、仕事の相棒であるパートナーの編集者を上手に巻き込むのです。こちらは打ち合わせを終えると「よし、やってやろう」と、すっかり著者に「巻き込まれ」てしまっていたのでした。