顧客の獲得・維持を図るコンテンツ・マーケティングでは、どんな内容を発信すればよいのか。1つの有力な方法として、興味深い統計や分析結果を提供する「データ主導型のストーリー」がある。IBMやキックスターターなど6つの事例を紹介。
「データ主導型のストーリーテリング」は、コンテンツ・マーケティングにおける次の大きな潮流になろうとしている。実際に、企業はすでにその効力を、顧客関係のサイクルのあらゆる段階で――初期のブランド認知の確立から、自社の成果のアピールに至るまで――活用している。本記事では、一連のマーケティング活動の各段階においてデータを活用する方法を示そう。
●ブランド認知を確立する(例:オールステート)
保険会社のオールステートは、データを自社のコミュニケーション戦略の中心に位置づけ、ブランドの知名度を高めるためにさまざまな情報源とマーケティングチャネルを活用している。安全運転の全米都市ランキングを毎年発表しているほか(下図も参照)、データに基づく知見やインフォグラフィックをブログに頻繁に載せている。オールステート財団のサイトでは、10代の若者による運転の危険性やドメスティック・バイオレンスについて、データをふんだんに用いた情報を提供している。
同社はまた、社内データや公のデータ、調査で得たデータを含む多様な情報源を利用して、データを中心にしたブログ記事、報告書、インフォグラフィックを頻繁に提供している。たとえば自動車の盗難について、さまざまな公の情報源を用いてブログ記事とインフォグラフィックを作成し、読者にリスクを減らす方法を伝えている。不注意運転に関する記事は、みずから実施したアンケート調査に基づくものだ。ホリデーシーズンの自宅での災難(火事や盗難など)に着目した記事では、保険請求とアンケートのデータを組み合わせて用いている。
あなたの会社が、データ主導型のコンテンツによって初期のブランド認知をある程度獲得できたら、オールステートの例にならうとよい。成果を拡大するために詳細な報告書を作成したり、より幅広いデータソースを活用したりしていくのである。
●カギとなるオーディエンスを見込み客に変える(例:IBM)
特定の市場やオーディエンスを対象としているならば、ブランド認知の確立だけでは十分ではなく、見込み客を獲得する必要がある。そこで賢明なやり方は、ターゲットとする企業にとって必読となるデータ主導型コンテンツをつくることだ。
その事例として、IBMが最高責任者レベルの企業幹部に行ってきたインタビューに基づいて作成した、「個客価値の共創(The Customer-activated Enterprise)」などのコンテンツが挙げられる。CEOやCMOを含む何千人もの経営トップにインタビューを行い、その結果をまとめたこのデータ資産によって、同社は世界中の多くの企業幹部からコンタクト情報を得られるはずだ。
●専門性を武器にして契約を勝ち取る(例:インテュイット)
会計ソフトウェアを販売するインテュイットは、納税申告用ソフトである「ターボタックス」のコンテンツ・マーケティング戦略において、データをふんだんに用いたインフォグラフィックを中軸に据えてきた。扱うテーマは、世代間における消費性向の違い、クラウドファンディングの税金への影響、漫画・ポップカルチャーのファンが集うコンベンションであるコミコンへの参加に要する費用、など多岐にわたる。
同社のインフォグラフィックは、ピュー・リサーチセンター、米国内国歳入庁(IRS)、ギャラップなど、さまざまな第三者機関による公開データソースも活用している。その内容は、遊び心にあふれたものから実用的なものまで広範囲にまたがるが、どれも「財務」に関するあらゆる事項に対する同社の卓越した専門性と情熱を立証するものだ。
無味乾燥なデータは、説得力のあるビジュアル要素と巧みな再解釈、そして時折インタラクティブ性を加えることで、活き活きとしたものになる。全米各州で税金還付がどれほど未請求のままかを示す、インタラクティブなインフォグラフィックはその好例だ。このようにしてインテュイットのコンテンツは、見込み客を購入者へと変えるのに役立っている。