機械には担うことの難しい、人に求められる役割とは、一見全く無関係に見えるような要素、過去においてまったく共通項がないと考えられるような要素を組み合わせて“驚き”を作り出すことである。今回はアイデアを生み出すためのプロセスについて取り上げる。

“驚き”を作り出す能力

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東出浩教(ひがしで・ひろのり)。
早稲田大学ビジネススクール教授。慶應義塾大学経済学部卒業。鹿島建設に入社し、建設JVのマネジメント・欧州での不動産投資の実務に従事。その後ロンドン大学インペリアルカレッジ修士課程修了(MBA)。2000年に同カレッジよりEntrepreneurshipを専攻した日本人初のPh.D.を授与される。
起業、創造プロセス、ビジネス倫理と哲学等が現在の主たる研究対象。ベンチャー学会副会長、各種公的委員会、東京商工会議所産業人材育成委員会ダイバーシティ推進専門委員会座長を務めるなど、学内外で幅広く活動している。

 “Eureka!”は“わかった!ひらめいたぞ!”という意味合いで、何か発見した瞬間を表す言葉としてよく使われる。英語の発音では、“ユリィーカ”くらいだろうか。

 古代ギリシャのアルキメデスが、国王から、贈り物である純金の王冠が実は混ぜ物のある不純な金で作られているのではないか、王冠を壊さずに確かめる方法はないか、という難題をつきつけられたそうだ。アルキメデスは、考え抜いた末に、ある日、少しリラックスしようと風呂に入り湯船につかった瞬間に水が上昇していることに気づき、物体の重さと体積から比重を計算するという、新しい方法を生み出した。その時、叫んだ言葉が“Eureka!”であると言われている。

 スティーブ・ジョブスが、2005年、スタンフォード大学の卒業生に向けてのスピーチで、“connecting the dots”という話を交えた。Eureka!の現代版だろう。“You can't connect the dots looking forward. You can only connect them looking backwards…”、と始まり、これまで我々が蓄積してきたいろいろな情報や経験は、将来どこかで思いがけなく繋がり、それが人生を、社会を変えていく、というメッセージとなっている。これから、コンピューターなどの機械ではなく、起業家的“人間”が果たしうる最も大きな役割は、まさにconnecting the dots、一見全く無関係に見えるような要素、過去においてまったく共通項がないと考えられるような要素を組み合わせて“驚き”を作り出していく能力となるだろう。そのためには、次のような創造のプロセスに慣れ、繰り返し使っていくことが大切だ。