プレッシャーがチームに与える悪影響

 ビッグ4の一翼を担う会計事務所。そこに、ある工業部品メーカーの小規模プロジェクトに熱心に取り組もうとする監査チームがあった。そのキックオフ・ミーティングで、プロジェクト・リーダーのクレアはこう言った。「報酬はさほどではありませんが、大事なのは、このプロジェクトが人材育成のよいチャンスになることだと、私は考えます」

 チーム・メンバーは、各自が新しい領域で経験を積めるように業務を分担した。チーム内でこのクライアントをいちばんよく知るミッチが、同クライアントの仕掛品在庫の管理法に適した、原材料費の新しい追跡方法を提案した。この機会にぜひ試してみようと、全員が賛同した。何もかも順調だった──最初のうちは。

 数週間後にクレアから、クライアント企業の財務部長フレッドがチームを「かぎ回って」いるという報告がなされた。彼女の憶測では、フレッドが自分の微妙な立場を守るためにチームの様子をチェックしているのではないか、という。彼はクレアの上司に「もっと関与してほしい」と何度も頼んでいるらしい。このため、だれもがプロジェクトの完了のみを重視するようになり、新しいことを学ぶという当初の目標は消滅した。