アマゾンの新サービスは小売りの未来か

 時を同じくして、僕の住むエリアでは、アマゾンが「Prime Now」サービスを開始しました。このサービスは、水やジュース、シャンプーやさらに家電なども、アプリで注文すると最短1時間で配送されるというサービスです。まだ試していませんが、寒い日に買い物に出かけるのさえネットを使えば不要になるのです。

 こうなると、「町で買い物をする」という行動は今後限りなく消滅していくのだろうか。供給側から見ると「小売りの未来」を占うことになります。「モノを買う」行為がネットに置き代わると、サービスを受ける行為以外の小売店はなくなるに等しい。教育や医療などのサービスでさえ、ネットで自宅で受けられる時代です。人工知能の社会で生き残る仕事として、「髪を切る人」が取り上げられたように、身体との物理的接触の伴うサービスは店舗として残るでしょう。

 果たして店舗による物販業はなくなるのか。生き残るとすれば、何か。それは、従来の物販業にあった、モノとお金の交換以外の機能を探ることから始めることではないでしょうか。

 そもそも買い物とは市場での貨幣とモノとの交換です。そして買い物する場――市場が街をつくった地域社会のなかで人が交差する場所として発展しました。つまり買い物の「場」が、人が交わる場所になった。人が交わることで情報が共有、拡散される。つまり社会の機能をつかさどる役割を市場は担っていたのです。

 人は市場に行ってほしいモノ、必要なモノを購入する。しかし、買い物という行為にそれ以外の価値はなかったのか。店員さんという家族や友人以外の人と会話することの価値は何か。買い物をしなければかかわることがなかった人との一期一会の出会いの価値は何か。購入をする見も知らない人の行動から情報を得ていたのか。

 このような消費行動に伴って人々が無意識に感じていた価値を分析することから、ネット時代の未来の小売りの姿のヒントが得られるのではないでしょうか。(編集長・岩佐文夫)