コーポレートガバナンス・コードの適用開始により、多くの企業がガバナンス強化に舵を切った。しかし、形式だけに留まっている企業も多く、実質が伴うものに出来るかどうかには差が出ている。最終回では、ガバナンス改革の行方について論じる。

 

ガバナンス改革の試金石とは

第1回~3回までで述べてきたように、現在日本で進められているコーポレート・ガバナンス強化は、投資リターンを高め、株主からの要請に応えることに端を発している。

 しかし、コーポレート・ガバナンスを強めれば、果たしてROEに代表される収益率が高まるのかと疑問をもつ人は多い。例えば、社外取締役に多様性をもたせれば業績がよくなるのか。チームワークの良かった経営が、(これまで一緒に働いたこともない)女性や外国人を入れると調和が崩れて業績悪化につながらないか。最近、経済紙のコラムには社外取締役と付き合わなくてならなくなると気が散って業績アップに落ち着いて取り組めない、という企業幹部の発言も引用されていた。

 これまでの連載でも明らかにしてきたつもりだが、企業価値の向上に経営者が本気で取り組もうと必死に考えたならば、呼び方はどうであれ、コーポレート・ガバナンスの強化を追求するはずである。コーポレートガバナンス・コードを、単に上から与えられた文書として読んで経営者が「これくらいやれば批判されないかな」と考えて対応するならば、実質は何も変わらない。

 経営者が本気になって「魂をいれる」ことがない限り、意味がないのである。まさに「形式から実質へ」である。ガバナンスにはそもそも、コンプライアンスを中心とした守りのためのツールという意味も強いが、日本の場合には、経営者がリスクをとらず収益が低迷していることのアンチテーゼとして「攻めのガバナンス」という言葉が使われている実態がある。