本書の中ではこう触れられている。「部下との関係は単なる契約だという先入観を弱めてみよう。部下の存在理由は『仕事を終わらせること』だけではないし、マネジャーの役割も監督することだけではない。仕事を終わらせ、会社を成長させられる長期的なアイデアを協力して見つけるのがあるべき姿だ」と。

上司と部下の新たな関係

 優れた人材を育てても、その人材が自分の会社に留まらず、新たな活躍の場を求めて去ることを心配する人もいるかもしれない。しかしスーパーボスは人員の減少を恐れない。むしろ、もっとも優秀な部下が巣立っていくのは当然の成長段階であり、喜ばないまでも受け入れるべきことだと考える。部下が巣立ち、ネットワークを広げていくことが、スーパーボス自身の評価を高めることにも繋がるし、自分と組織の両方にとってチャンスになるという考え方なのだ。

 シリコンバレーでは、リンクトインの創業者であるリード・ホフマンが「アライアンス」という企業と個人の新しい関係を提唱した。雇用主と社員は相互信頼、相互投資の関係で繋がるべきで、社員が退職することになっても、会社との関係は終わらないと述べている。退職後も社外にいる仲間として情報交換したり、仕事をしたりする繋がりが続いていくことが、企業にとっても社員にとってもプラスになるのだと。

 スーパーボスと部下の関係も、「アライアンス」と近いものがある。会社を辞めたあとも、上司と元部下たちという新しいネットワークが、新しい強みを生み出していく。

 本書はスーパーボスの手腕に学び、どのように部下を育てていくかのヒントが詰まっている。それにくわえ、企業と社員、上司と部下というこれまでの固定観念が、これからますます変わっていくことを予感させる1冊でもある。