成長の加速を阻む要因は何か
今回の調査から、成長の加速を阻むいくつかの要因が識別されています。
意図はいいが実行が伴わない
企業はコスト削減を無目的にやっているわけではなく、収益性を伴った形での成長の加速という明確な意図を持って取り組んでいますが、その実行の状況は十分ではありません。成長のために重要であると位置づけた施策に対して最適な形で実際に取り組めている企業は、調査対象の4分の1以下に留まります。
成長に向けた足並みが揃っていない
経営層の間で担当分野やポジションによって優先事項についての考え方が異なっており、それが成長戦略の実行や最適な価値創造を阻害しています。こうした経営層の意思の不整合は、間違った分野でのコスト削減、間違った分野への再投資、さらには企業価値の低下というリスクを招いています。
再投資先の優先順位を決める難しさ
コスト削減で捻出した資金を、事業戦略と整合性の取れた形で優先づけして再投資している、とした回答者は3分の1以下に留まります。再投資先がさまざまな分野に分散してしまっているのが現状です。注力分野が明確でなければ、コスト削減や成長施策で結果を出せなくても当然だといえるでしょう。
どのステークホルダーを優先するか
「コスト削減で捻出した資金を株主配当に再投資している」とした回答者は全体の3分の1以下、また「投資アナリストが重視する利益率の改善や自社株買い、配当などを通じて、株主価値向上に優先的に再投資している」とした回答者は4%に留まりました。大変興味深い事実です。
再投資先として意見が一致する唯一の分野:デジタル
コスト削減効果をどの成長施策に優先的に再投資するかという点について回答者の間に意見の一致はありませんが、デジタル化に振り向けなければならないという点については一致しているようです。回答者の間で最も共通していた再投資先はデジタル・テクノロジーで、半数以上(54%)が再投資先として挙げました。こうした回答者は、デジタル・ビジネスにより戦略的な成長が実現する(85%)、デジタル戦略により最先端のオペレーティング・モデルが実現する(82%)、と考えています。
進むべき道
持続可能な成長を達成するためには、企業は成長の源泉を見極めたうえで、成長戦略と整合性が取れる形でコスト削減や再投資を行う必要があります。経営層の間の意見の不整合を解消し、継続的なコスト管理を重視する企業文化の形成を通じて、コスト削減に対する賛同を組織全体に醸成することも必要です。そして、変化への対応力・柔軟性、パーソナル化を強化すべく努力を続けていくうえで、デジタル化が不可欠です。