オペレーティング・モデルを見直し俊敏性を獲得する

成長への柔軟性に欠けるオペレーティング・モデル

 企業のオペレーティング・モデルは、収益性の高い成長をどう実現するのかという方針と整合が取れている必要があります。しかし、「変化に柔軟に適応できるオペレーティング・モデルを持っており、戦略に沿った形で価値創出につながる活動を一貫して推進できている」と回答した企業は、全体の4分の1に留まりました。

 オペレーティング・モデルを見直すことで、企業は俊敏性を得ることができます。ある食品グローバル企業は、新たなオペレーティング・モデルを設計・構築し、効率性・俊敏性を高めました。このオペレーティング・モデルでは、サプライチェーンや財務、人事、ITなどの重要な機能がグローバル共通のサービス基盤を形成しています。その結果、毎年1億ドルのコスト削減効果が長期にわたって見込まれ、捻出された資金により同社は成長戦略を加速しています。

 成長を加速するための適切なオペレーティング・モデルを選択するためには、何を軸に置いて事業展開していくかを決めねばなりません。たとえば、グローバル化/ローカル化の軸があります。グローバル化とローカル化のバランスを取り、グローバル化で規模のメリットを享受しつつ、ローカルにサービスの有効性を高める、といったことです。またブランド/カテゴリーという軸もあります。特定業界の製品のイノベーションや成長施策に注力し、ブランドを徹底して差別化して消費者により近い存在になる、といったことが一例になります。

企業のオペレーティング・モデルの変革を阻むトップ3の要因

・改革のコスト(43%)

・テクノロジー(38%)

・チェンジ・マネジメント(37%)

モンデリーズ・インターナショナル:ゼロベース予算の導入でコスト削減を実現

 モンデリーズ・インターナショナルは、いままで以上に効果的な競争力発揮と営業利益率向上を目指して、「ゼロベース予算」のシステムの構築をアクセンチュアに依頼。両社は連携して全社レベルの企業文化の変革に取り組み、間接費抑制に成功しました。

 支出の透明性を向上させ、予算プロセスを見直してコスト管理の責任体制を刷新し、適切なチェンジ・マネジメントを実施したことによって、モンデリーズは2014年だけで3億5000万ドルのコスト削減を迅速に実現。さらに3年間で10億ドルのコスト削減を見込んでいます。コスト意識を企業文化に根づかせることで、コスト削減効果を成長のために再投資しようとしています。

成長施策が分散し、焦点が定まらない

 大半の企業があまりに多くの成長施策を持っており、どの施策に資金を投入すべきかの意思決定を適切に行えていません。コスト削減により捻出した資金の再投資先を事業戦略と整合が取れた形で優先順位づけしている企業は、全体の3分の1以下に留まります。大多数の企業は、ショットガン的なアプローチで多数の施策に分散して再投資しているのです。正式な投資評価プロセスによって再投資の効果を評価している企業の割合が半分以下に留まっているのもうなずけます。

 価値創造につながる活動を実行に移す自社の能力に自信を持っている回答者は、わずか24%に留まりました。収益性の高い成長を実現するために、企業はコストを削減し、そこで捻出された資金を成長のために再投資するわけですが、そのためには成長分野を見極めることが重要です。そうすることで初めて、価値を生み出していない資金の所在を正確に識別することができるでしょう。

 ある大手アルコール飲料会社は過去5年間で、既存事業における営業利益を200ベーシスポイント以上伸ばし、6億ユーロものコスト削減を達成しました。この企業では、売上げ成長のための最も有効な方法は、生産性向上によるコスト削減効果の3分の2を再投資に振り向けることである、と考えています。