なぜコスト削減は実行が難しいのか
明確な目的を持ったコスト削減
企業は現金や資産、設備を効率的に活用することで成長します。そして、効率化に向けた最善の方法は、やはりコスト削減です。重複するコストや価値創出につながらないコストは成長の障害となり競争力を削ぐことになります。コスト削減は疑問の余地なく、企業にとっての最優先事項の一つです。
成長施策に再投資することを念頭に置いてコスト削減に取り組んでいるかとの問いに対し、回答者の大多数(82%)が「はい」と回答しています。また、回答者の72%が、コスト削減で捻出した資金を成長分野に振り分ける具体的な計画を持っており、そうした計画が全社戦略の下で行われていると回答しています。
企業は具体的な成果を念頭に置いてコスト削減を行っているといえます。今回の調査では、以下の4つの成果が最も各社に共通していることが明らかになりました。
・市場変化に対応するため、簡素化し柔軟性を高める(58%)
・競争優位性を高める(55%)
・財務的な業績を向上させる(52%)
・コスト削減効果を成長施策に再投資する(49%)
実行は困難。優先順位についての意思が統一されていない
コスト削減活動そのものの難しさ、柔軟性に欠けたオペレーティング・モデル、そして経営層の意思の不整合といった要因が、収益性の高い成長を達成するうえでの障害となっています。
実行でつまずく
なぜコスト削減は実行が難しいのでしょうか。コスト削減活動は多くの場合、事業戦略と結びついておらず、それがコスト削減活動の持続性を損ねています。「付加価値を生まない事業活動や投資を識別し、排除するプロセスが確立している」とした回答者は全体の23%に留まります。また「コスト削減活動の効果を持続的に生んでいる」とした回答者は36%に留まります。
コスト削減活動により目指す成果として、市場変化に対応する柔軟性の向上および競争力の強化がそれぞれ1番目、2番目に挙げられており、削減したコストを成長に再投資することは4番目の目的に留まっています。しかし、興味深いことに、成長への再投資を3番目以内に挙げている企業も半数近くに上っています。こうした乖離があることは、経営層に意思の不整合があることの一つの証左でしょう。
大多数の回答者は、「テクノロジー活用やデジタル化、オペレーティング・モデルの革新は、コスト削減と成長を実現する要因である」という点で一致しています。また回答者の44%は、「持続性のあるコスト削減活動を実現するのはテクノロジーだ」との強い意見を持っています。しかし、テクノロジーはいろいろなことを可能にする一方で、取り組みの複雑性を増大させることには注意が必要でしょう。
回答者の35%が、「パートナー企業のコストまでを視野に、エコシステムとしてのコスト削減に取り組むことが、持続的なコスト削減を実現する」という点を強く支持しています。しかしエコスシステム全体としての成果を目指すということは、さらに実行面での複雑性を増大させます。
こうした複雑化に対処するために、企業はコスト削減の原則や手続きについて全社の足並みを揃えねばなりません。エコシステム全般にわたる業務の改革を進めるうえで、新しいテクノロジーを活用することが一つの有効な打ち手になるでしょう。