どこに再投資するか、経営層の意思統一を

 CXOクラスの経営トップ層と、部長などの上級管理職との間には、どこに再投資すべきか、コスト削減の取り組みを事業戦略とどのように整合させるべきか、に関して意見の不整合が見られます。 ある世界的なフレグランス企業の例では、頻繁に在庫削減のための施策を実施していました。経営トップ層は会計年度末までに在庫を減らすことを求めていましたが、上級管理職クラスはそのような取り組みはすぐまたリバウンドしてしまうだけだと考えていました。

CEO

 CEOの51%が、「自社は企業の価値を高める活動を明確に優先順位づけしており、それに沿って経営資源を振り向けている」との強い意見を持っているのに対し、同様に考えるCFOは34%。

 CEOの70%が、「自社は正式な投資評価プロセスを持っており、コスト削減によって捻出した資金の再投資の効果を適切に評価している」と考えているのに対し、同様に考えるCFOはわずか49%。

 CEOの23%が、「市場変化に対応するために簡素化を進め柔軟性を高めることが、コスト削減活動が目標に掲げるべき最大の成果である」と考えているのに対し、同様に考えるCFOは10%。

CFO

 CFOの30%が、「再投資先の優先順位設定の基準は、いかに短期間でROI向上に寄与するかである」と考えているのに対し、同様に考えるCEOは20%。

 CFOではわずか17%が、「自社のオペレーティング・モデルは戦略的な成長施策に整合し、成長の加速を促している」と考えているに留まるのに対し、同様に考えるCEOは31%。

 CFOの24%、CEOの21%が、「競争優位性の向上が、コスト削減活動が目標に掲げるべき最大の成果である」と回答。

 今回の調査により、CXOクラスの経営トップ層(36%)は部長などの上級管理職(25%)と比べて、「コスト削減で捻出した資金の再投資先の優先順位は、事業戦略と整合している」と考える傾向が強いことが示されました。経営トップ層は自社のコスト削減効果の再投資先に関しても、上級管理職とは異なる意見を持っています。「顧客体験・消費者体験を向上させる分野に再投資している」と回答した経営トップ層が48%だったのに対し、上級管理職は36%でした。また、「株主配当に再投資している」と回答した経営トップ層は25%であったのに対し、上級管理職は37%でした。

 経営トップ層は上級管理職より、「コスト削減の成果は損益計算書上に現れる」と考える傾向が強いことも明らかになっています。このような意見の乖離は、CEOとCFOの間でも顕著です。

CXOクラスの経営トップ層

 価値創造活動を実行する自社の能力に自信を持つ経営トップ層が31%であるのに対し、上級管理職は16%。

 「コスト削減で捻出した資金の再投資先の優先順位は、事業戦略に整合している」と考える経営トップ層は36%であるのに対し、上級管理職は25%。

 「コスト削減で捻出した資金を、顧客体験・消費者体験を向上させる分野に再投資している」と考える経営トップ層は48%であるのに対し、上級管理職は36%。

部長などの上級管理職

 企業価値向上につながらない活動を排除することに関して自信を示す上級管理職が76%に留まるのに対し、経営トップ層は84%。

 「適切なコスト削減施策が実施されている」と考える上級管理職が16%に留まるのに対し、経営トップ層は26%。

 「再投資を株主配当に振り向けている」と考える上級管理職は37%であるのに対し、経営トップ層は25%。

※『成長を加速し、競争力を向上させる「俊敏な組織」を目指して(2)』に続きます。