なぜリーダーたちのグループは、こうも一貫して冴えない結果だったのか。メンバー間のやり取りを収録したビデオから、興味深い答えがいくつか見つかった。

 まず、すべての実験にわたって、リーダーたちのグループ内では誰が最も高い地位に就くべきかをめぐる争いが起こり、それがパフォーマンス低下の一因となっていた。誰がその場を支配すべきか、誰がグループの意思決定により大きな影響力を及ぼすのか、誰が他のメンバーよりも尊敬されるべきなのか。要するに、リーダーたちはグループ内で誰が「最高権力者」になるべきかをめぐって争い、この対立によって協働能力が阻害されたのだ。

 また、ビデオからは次のことも明らかになった。リーダーたちのグループはタスクへの集中力、および効果的な情報交換において、他のグループよりも劣っていた。創造性の場合と同様に、なんとも皮肉な傾向である。単独での作業時には、権力はタスクへの集中力と効率の向上につながっているのだ。

 いかにして有利な地位を得ようか。厳しい評価を下されて面目を失うかもしれないから、アイデアの共有はやめておこう……。共同作業にあたるリーダーは、立場をあれこれ気にするあまり、目の前のタスクから注意がそれるようである。

 リーダーは権力を保有・経験することで、個人的な仕事では他に勝る能力を発揮しうる。しかし、その強みが、他のリーダーとうまく付き合い協働するうえではマイナスに作用する。

 権力を持つことに慣れているリーダー同士のやり取りは、対立とコミュニケーション不足に陥りやすい。それが集団としてのパフォーマンスを損ねてしまうのである。


HBR.ORG原文:Powerful People Underperform When They Work Together February 24, 2016

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アンガス・ヒルドレス(Angus Hildreth)
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス組織マネジメントグループの博士候補者。
 
 

キャメロン・アンダーソン(Cameron Anderson)
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス組織マネジメントグループの、ロレーン・タイソン・ミッチェル記念講座教授。リーダーシップ&コミュニケーションIIを担当。