トーマス・エジソンが創業し、100年以上の歴史を誇るゼネラル・エレクトリック(GE)は、いかにしてデジタル体質へと変貌を遂げたのか。インダストリアル・インターネットを推進する伝統企業の事例から、ラム・チャランが8つの教訓を抽出する。
もしあなたが、自社を数理に強い組織へと変えていないならば、深刻な事態を迎えることになるだろう。
間もなくあらゆる産業で、デジタルが推進力となる。そして勝ち残る企業は例外なく、一連の顧客体験を形成する手段としてアルゴリズム、つまり情報処理のための数式を使うようになる。いままで手にしていた強みは、顧客体験を差別化する一連の優れたアルゴリズムの前では色褪せる。ビジネス価値を創出していくのは、アルゴリズムなのだ。
これは単なる推測ではない。センサー、クラウド、移動/広域無線通信、その他さまざまな技術が、デジタル情報の流通量を飛躍的に増やしている。最速のコンピュータで動くアルゴリズムは、それらの情報をもとに、パターン検出、予測、複雑な問題の解決などを含む驚異的な仕事を成し遂げる。新たな情報の発生に合わせて、自己修正さえできる。
アルゴリズムによる顧客体験の劇的な変化は、「カタリスト」(触発者)の手によって推進されてきた。たとえば晩年のスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、マーク・ザッカーバーグ、マーク・アンドリーセンなどだ。
こうしたカタリストたちは、競争に日々参入している。ベンチャー投資家はカタリストを探し求め、早急にスケールアップさせるべく潤沢な資金を注いでいる。その結果起きているのが、業界の破壊や再編、新たな市場空間の創出、そして古い産業エコシステムの刷新である。
一部のリーダーはこの潮流を無視したり(かつてのノキアのように)、守りの姿勢でいたりするだろう(アマゾンへの対処が遅れたウォルマートのように)。しかしそうでないリーダーは、この流れは不可避であり、自社を変革する以外に道はないことを悟っている。その認識から生じるのは、「こうすればよいのだ」という洞察よりも、むしろ「どうすればよいのか」という不安であろう。
誰が何をやり、誰が成功しているのか。CEOたちはそれを知ろうと模索している。古い企業は、数理に強い組織へと変われる可能性はあるのか? それをスタートアップと同じ速さで実行できるのだろうか? こうした疑問への答えは、どちらもイエスである。
大企業を変革することは可能だ。そのロードマップは、世界でも最も伝統ある企業の1社によって示されている。ダウ平均株価の算出が始まった1896年当時の構成銘柄のうち、いまも生き残る唯一の企業、ゼネラル・エレクトリック(GE)である。
同社は、新たに出現するデジタル空間をふまえてみずからを再構築することで、優位を取り戻そうとしている。インダストリアル事業における新たな競争のルールを世界規模で形成し、変革の方法を世に示しているのだ。それは規模、複雑さ、歴史を問わずあらゆる企業にとって参考になるものである。
古い企業のリーダーがGEの変革から学べる教訓を、以下に挙げよう。