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「欲動」がモチベーションの源泉
厳しい環境であっても、社員たちに最高の仕事をさせるのは、マネジャーにとって永遠の、そしてなかなか実現できない目標の一つである。実のところ、我々人間のモチベーションを高めるものは何なのか、その解明は、何世紀にもわたって取り組まれてきた。
歴史上の著名な思想家たち、たとえばアリストテレス、アダム・スミス、ジークムント・フロイト、アブラハム・マズローなどは、人間行動の機微を理解しようと努め、その成果として、人間行動の理由について膨大な教えを残した。
しかし、これらの偉人たちは、現代の脳科学によって解き明かされた知識の恩恵にあずかることはなかった。彼らの理論の根底には、学問に裏づけられた地道な研究があることは間違いない。ただしそれは、対象者を直接観察した結果のみに基づいていた。例えて言えば、エンジンを分解できないため、スタート、停止や加速、方向転換などの動きを観察することで、自動車が走る仕組みを推論したようなものだ。
幸いにも、神経科学や生物学、進化心理学などの学術分野を横断する新たな研究によって、自動車になぞらえればボンネットの下をのぞき見ること、すなわち人間の頭脳について深く学ぶことが可能になった。そのような研究成果を総合すると、人間は進化の過程で残された基本的な感情のニーズ、すなわち「欲動」に駆られることが示されている。
2002年に出版されたDriven[注]のなかで、ハーバード・ビジネススクール名誉教授のポール R. ローレンスと本稿執筆者の一人ニティン・ノーリアは、次の4種類の欲動の存在を指摘している。
・獲得(drive to acquire):社会的地位など無形なものも含めて、稀少なものを手に入れること
・絆(drive to bond):個人や集団との結びつきを形成すること
・理解(drive to comprehend):好奇心を満たすことや自分の周りの世界をよく知ること