デジタル化による組織・事業の変革は、誰のためにやるのか。「他社との競争」から「顧客との併走」へと思考を改めるための、3つの視座。


 昨今ではあらゆる企業が、デジタル面の変革を検討もしくは推進しているようだ。そのほとんどが、「破壊的で有力な競合他社に後れを取らないため」という理由を挙げる。

 しかし、その観点は狭すぎるのではないだろうか。今日の企業にとって最大の課題は、ライバルではなく「自社の顧客」に後れずついていくことであると、我々は考えている。

 1つの理由として、人は企業よりも速くデジタルへと移行している。個々人を小さな企業に例えて考えてみよう。彼らは次の業務の基幹プロセスを再設計したことになる。調達(オンライン購入)、人材獲得(オンラインの人材マーケットプレイス)、協働(ソーシャルネットワーク)、市場調査(ユーザーレビュー)、財務(モバイル決済)、出張(部屋と車のシェア)。実際の企業ははたして、基幹プロセスをこれと同じレベルで刷新しているだろうか。

 そして、顧客の要望は「流動化」が進んでおり、業界の垣根にしばられない。一般消費者も法人のバイヤーも、企業の顧客サービスをその競合他社と比較するのではなく、どこのものであれ、とにかく最良のサービスと比べる。この顧客の要望は、ウェブサイト、モバイルアプリ、ロイヤルティ・プログラム、ブランディング、さらには社会的責任に対しても同様である。

 では、企業はどうすれば顧客に後れずついていけるだろうか。必要なのは、顧客と同じ考え方をすることだ。