12~13世紀、仏シャンパーニュ地方の交易市は中世最大級の繁栄を遂げた。その成功は、「公平性とルールの徹底」に支えられたという。これは現代のプラットフォーム事業にも大きな示唆となる。
ベンチャーキャピタリストは昨今、プラットフォーム市場にすっかりほれ込んでいる。いわゆるユニコーン企業(評価額10億ドル超のスタートアップ)の大半が、プラットフォーム上で売り手、買い手、その他のプレーヤーをつなげる市場の提供者である。ウーバー、エアビーアンドビー(Airbnb)、コワーキングスペースを提供するウィーワーク(WeWork)、アマゾンはいずれもプラットフォームだ。
今日の流行ぶりから、プラットフォームは21世紀の技術イノベーションの1つと考える人もいるかもしれない。だが、そうではない。プラットフォーム市場は何世紀も前から存在してきた。何事もそうだが、現代のプラットフォーム設計者は、歴史の一端を知ることから学ぶものがあるかもしれない。
大半の社会的な制度・機関と同じく、市場が繁栄するには人々から愛され、注目される必要がある。市場の立ち上げと運営維持において、「市場創造者の役割」が特に重要となる場合、それはプラットフォームと呼べる。
クレジットカードやフェイスブックやiPhoneはいずれも、独自のやり方で入念に手をかけられた市場であり、さまざまなグループを引き合わせて取引を促す場である。VISAカードの所有者と小売業者、フェイスブックの広告主と登録ユーザー、iOSアプリの開発者とiPhoneユーザー。他にも例は無数にある。ビデオゲームの端末、コンテナ輸送、各種クレジットカード、宅配便、雑誌・新聞、ウェブ検索、不動産仲介、HMO(米国の健康保険のネットワーク)、ショッピングモール。いまやマイクロベンチャーズやファンダーズクラブのような、投資家とスタートアップを引き合わせるプラットフォームさえある(さらに、その投資対象にはプラットフォームの卵もたくさんある)。
プラットフォームがこのように遍在するようになったのは、インターネットの出現とスマートフォンの台頭によるところが大きい。学術界、特に経済学者たち(「ツーサイド」や「マルチサイド」などの言葉を使う人々)がプラットフォームに注目し始めたのは、たかだか十数年前のことだ。そして世間一般がそれを本当に意識し始めたのは2~3年前、ウーバーのような企業が突然登場した頃からである。
だが、プラットフォームはずっと昔から存在している。それは少なくとも、12世紀フランスの「シャンパーニュの大市」にまで遡ることがわかっている。