米ヤフー凋落の一因として「モバイルでの遅れ」が指摘される。失敗の経緯と要因を、過去の収支報告におけるモバイルへの言及頻度から考察する。


 グーグルの2006年第1四半期の収支報告で、当時のCEOエリック・シュミットはモバイルにことさら強く言及した。iPhone発売の1年以上前であり、アンドロイド搭載スマートフォン発売の2年以上前のことである。

「当社の大事な戦略分野の1つ、モバイルにおける進展を強調したいと思います」。彼はこう述べ、ブラックベリーのユーザーの間でグーグルマップが大好評であることに触れた。そして、自社のコンテンツすべてを携帯端末で使えるようにすることが必須だと加えた。

 一方、米ヤフーの同じ期の収支報告では、電話への言及はわずかであった。ドイツW杯とのタイアッププロモーションについて1度。PCから電話できるという新機能の説明を数に入れれば、計2度である。

 再生に苦しむヤフーがインターネット事業の買い手を探すなか、同社の失敗についてさまざまな説が挙げられている。特に目立つのは、モバイルに乗り遅れたという意見だ。『ザ・ニューヨーカー』誌のバウヒニ・バラの記事によれば、マリッサ・メイヤーが2012年にCEOに就いた時、「ヤフーのモバイル事業はほとんど無きに等しかった」という。メイヤーがヤフーを「スマホ時代」に導く任務を課されたのは、スマートフォンの普及が始まって丸5年も経ってからなのだ。

 この頃、アップルとグーグルはすでにモバイルOSを支配しており、フェイスブックはアプリで大きく躍進していた。おそらくヤフーの参入は、2012年の時点で手遅れだったといえる。

 私はこの説に興味を抱き、ヤフーがこれまでモバイルにどう言及してきたのかを探るために、収支報告での声明に目を通してみることにした。経営陣は、本当にスマートフォンの重要性を見逃したのだろうか。あるいは、重要性を認識していたものの、実行面で失敗したのだろうか。