大成功企業が
なぜ失速するのか

 大きな成功を成し遂げている企業であっても、いつか必ず、我々が「失速」と呼ぶ危機に直面するものだ。売上げや利益の伸びが突然激減したり、高かった株主利回りが資本コストをはるかに下回るまで急落したりする。失速はたいがい、成功を牽引してきた成長エンジンが機能しなくなる時に起こる。しばしば誤解されるが、これは多くの場合、ビジネスモデルが急に時代遅れとなってしまうことが原因ではない。

 むしろ我々の研究によれば、失速はたいてい、事業が複雑になりすぎて起こる。それにより、官僚主義によって社内が硬直化したり、内部の機能不全が情報の歪曲やマネジャーの的確な状況判断や迅速な決断を阻んだりするのだ。

 失速の症状について企業幹部に尋ねてみると、次のように言い回しはさまざまだが、原因は共通している。「顧客との接点を失った」「複雑なプロセスや大量のパワーポイントに足を取られている」「機会には恵まれているのに、思い切った決断ができない」「かつてはスリルに満ちた飛行だったのに、いまではパワーも制御も利かない飛行機を何とか操縦しようとしているかのようだ」