マス・カスタマイゼーションの時代の幕開け?

 製品・サービスの個別カスタマイズと、安価な大量生産を両立する「マス・カスタマイゼーション」は、すべての経営者の夢であり、多くの企業が追求してきました。1990年代には、高度な工場管理システムやFMS(Flexible Manufacturing System、多品種少量自動生産システム)のような新たなツールのおかげで、ついにこの夢が実現されたという喜びの声も聞かれました。

 しかし、その喜びも長続きはしませんでした。結局のところ、当時の技術では、「コストを抑えた大量生産」と「個別カスタマイズ」の両立は不可能でした。しかし、デジタル技術が、ついにこの難問を解決したといえるかもしれません。いまや、企業は新たなデジタル・ツールとプラットフォームを活用して、カスタマー・サービスに多種多様なオプションを用意し、大規模かつ低コストで、個別カスタマイズされたサービス体験を提供することができるのです。

 これらのツールやプラットフォームは、顧客の購入行動をトラッキングし、個人の選好を記憶することによって、企業がより迅速かつ効果的に顧客一人ひとりのニーズに応えるのを支援します。

 たとえば、オンライン化によって、エンジニアのディスパッチを2時間単位で実施できるようになっています。たとえば、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)はTwitterを活用して、時間単位で顧客の要望に対応していますし、さらに、Twitter経由で、エンジニアと顧客が顧客個別のデータをダイレクトにやりとりできるようにしています6。Dellはユーザーの検索トピックのトレンドを分析して、適切なコンテンツへのクイックリンクをダイナミックに生成し、テクニカル・サポートのチャットサービス中にリンクを顧客に送信しています7。化粧品販売大手のSephora(セフォラ)は、独自のアプリを駆使してロイヤリティの高い顧客を小売店に呼び込み、顧客の購入履歴を把握した販売員が新旧の最適商品を薦めるというアプローチで、ライバルを突き放しています8

 いまこそ企業は、新たなデジタルサービスプラットフォームについて検討すべきです。調査では、企業幹部およびIT部門トップの35%がすでにそうしたプラットフォームを試しており、そのなかの60%はプラットフォームへの投資から利益を得ていると回答しています9

 重要なことは、ここで言うデジタルサービスプラットフォームは、単なるポータルやトランザクション・エンジンやBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールとは異なるということです。デジタルサービスプラットフォームは、顧客個別にカスタマイズされた体験を提供して、デジタル志向の顧客のロイヤリティを高め、新たな顧客を獲得し、他社への乗り換えを防止する競争優位性を生み出せなければなりません。

 現在、レガシー・ツールよりも高度かつ強力な機能を備えた、4種類のプラットフォームが誕生しています。アクセンチュアでは、それぞれを、①予測的プラットフォーム、②記述的プラットフォーム、③コントローリング・プラットフォーム、④エンゲージング・プラットフォーム、と呼んでいます。こうしたプラットフォームを活用できるかどうかによって、未来の勝者と敗者は明確に分かれるはずです。

出典

6 http://www.creditinfocenter.com/ wordpress/2009/02/02/use-twitter-to-contact-bank-of- americas-customer-service/

7 http://www.labnol.org/internet/dell-technical-support- on-twitter/13751/

8 http://www.cmo.com/articles/2013/5/28/a_digital_ customer_e.html

9 Accenture Technology Vision 2015:デジタルビジネスの時代――業界の垣根を越えて