メーカーや小売企業は、ネット販売を自社サイトで行うべきか、それともアマゾンのような外部ECサイトに頼るべきか。米アマゾンでのマーケティング経験者に基づき、6つの判断基準を提示する。


 2015年、米国では、成人の69%が月に1度以上インターネットで買い物をした。毎週ネットで買い物をした人は33%に達し、2014年の24%から伸びている(出典:ミンテル)。

 Eコマースの普及に伴い、アマゾンやジェットなどのオンラインマーケットプレイスは、迅速配送、送料・返品無料、幅広い品揃え、低価格などによって提供価値を高め続けている。顧客は無料の配送と返品をますます当然と考えるようになっており、返品条件が厳しいと購入しないという人は、実に80%に上るという(英語記事)。

 これは、消費者にとっては素晴らしい環境である。必要なものを買うことはかつてなく容易になった。私たち夫婦も新婚旅行に備えて、アマゾンのマーケットプレイス(外部の販売業者が参加できる売り場)で水着や夏物をまとめ買いした。複数のブランドとカテゴリーの商品を全部1つのカートに入れ、アマゾンプライムの会員特典を使った。

 一方で、オンラインマーケティングを担う経営幹部としての私の仕事は、かつてないほど困難となっている。

 私は現在、高級下着の販売を行うスタートアップ、ジョアネル(Journelle.com)のEコマース&デジタルマーケティング部門を統括している。顧客のロイヤルティの対象がブランドからプラットフォームへと移行するなか、当社のような専門店型のオンライン小売業者には次のような問いが突きつけられている。

 どうすれば顧客ロイヤルティを維持できるのか。商品を自社サイトで販売すべきか、それともアマゾンやその他の外部のプラットフォームを利用すべきか。その両方をやる場合、どうすればうまくいくのか。

 アマゾン経由の販売は、ある単純かつもっともな理由から、極めて魅力的である。サイトへのアクセスを増やすためのデジタルマーケティング費用がかからないのだ。

 アマゾンへのアクセスの規模は、いかなる販売業者の理想をも上回る。私はジョアネルに加わる前、アマゾンの子会社であるクイッツィに勤めていた。私が在職していた時、我々の中核戦略は、傘下のダイパーズドットコム(ベビー用品)やソープドットコム(家庭用品)などの独立型サイトへの投資から方向転換した。そして、アマゾンマーケットプレイスでの迅速な売上拡大に力を入れ始めた。その理由はまさに、アクセスが膨大だからだ。

 出品者は、垂涎の的である「ショッピングカートボックス」(一定の業績を上げている大口の出品者に付与される資格で、優遇特典がある)の獲得を目指して、最も競争力のある価格を提示するだけでよい。ショッピングカートボックスさえ獲得すれば、マーケティング費用を一切かけずに販売量を大きく伸ばすことができ、値下げによる損失とアマゾンへの手数料を相殺できるのだ。

 クイッツィはアマゾンでの販売規模を拡大すべく、幅広い品揃えと独自性に投資した。そして競合他社に勝つために、予測を基に値付けする効果的なアルゴリズムを開発した。すると日々の業務はすぐに、従来のオンラインマーケティングよりも、株取引の様相を呈するようになった。

 一方で、アマゾンへの過度な依存は弊害を伴う。まず、収益のあまりに多くの部分が、自社で管理しないプラットフォームから生じることのリスクがある。また、自社のあらゆる商品をアマゾンで売ると、直販との食い合いが生じるおそれがある(より高い利幅を失う)。さらに高級ブランドの場合、アマゾンのサイト上では高級志向の顧客に特別な体験を提供することはできない。

 諸々の選択肢を比較する際には、次に挙げる点を考慮しよう。