8月は一年でもっとも仕事に集中しにくい季節。天候も厳しく、休暇もあるため仕事は疎かになりがちである。しかし、休みを十二分に楽しむには、逆に直前に仕事を集中してやりきることである。
集中力のある人は、弛緩するのも上手い
スポーツ選手にお会いすると、穏やかな人が多いことに驚きます。別の言い方をすると、肩の力が抜けている人、あるいは適切な表現か分かりませんが「脱力系」というイメージの方が多いのです。
勝ち負けの世界。勝負師という一面を持つスポーツ選手は、本番では普通の人以上に集中力を発揮するはずなのに、日常的には実に脱力しているのです。
短距離走のある選手に聞くと、練習の大きなウェイトを占めるのが、集中力を高めることだと言います。気持ちを静め、そして高める。短距離を一気に走り抜く。そのためスタート前の心拍数は170を超えると言います。そして走り終えて、フォームや走り方とともに、集中力を高めて走ることができたかも、練習での大きなフィードバックポイントだと言います。
その彼らが、日常では脱力して見えるとはどういうことか。つまりスポーツ選手とは、集中力のプロフェッショナルでもあり、集中力を高めるのが上手い人は、脱力するのも上手なのではないでしょうか。だから、集中する必要がない日常では、普通の人以上にリラックスしている。
このコントロールは、集中力の無駄遣いをしない効果もありそうです。
仮に集中力の総和を「集中レベル(集中力の高さ)×時間」と定義します。そしてこの集中力の総和には、さほど個人差がないとします。40%の集中レベルで5時間過ごすのと、100%の集中力で2時間過ごすのでは、集中力の総和は同じになります。
これは仕事にも使えるのではないでしょうか。だらだらと5時間かけて仕事をするか、完璧に集中して2時間で終えるか。そして感覚的な推論ですが、仕事に集中できる人は、日常でリラックスするのも上手い。自分の経験でも集中して仕事をやり終えると、妙な解放感を感じる一方、だらだらと仕事を終えたら、その後もだらだらした中途半端な感覚が残ります。
大きな仕事をやり終える解放感。緊迫した状況を乗り越えた後に気づく、気が抜けた感。これらは、その目の前の仕事から逃げずに集中していた証拠でもあります。緊張しているレベルから弛緩するレベルに下がる落差が大きいほど、解放感を感じるものではないでしょうか。
8月になり夏休みを取る人が多いこの時期となりました。休暇前は、わくわくして仕事に集中できないかもしれません。来週から休みだと思うと、フェードアウト的に徐々に気持ちは休みモードに向かいがちです。しかし、よい休暇の取り方は、逆に直前の仕事を集中してやりきることではないでしょうか。集中してやり終えた爽快感をもって、そのまま休暇を思う存分楽しむ。思い切って休むことで、休暇明けの仕事が捗る。こんな休暇の使い方が理想的だと思えます。(編集長・岩佐文夫)