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カテドラル方式から「パス方式」へ
経営者にとって、ITプロジェクトはいまも頭痛の種である。それは、専用のシステムを構築する場合でも、ほぼ万能なパッケージ・ソフト(汎用ソフトウエア)を導入する場合でも、事情は変わらない。
ITシステムの根本的な問題は、多くの場合、オープン・ソースの推進者エリック S. レイモンドが「カテドラル(伽藍)方式[注1]」と名づけた開発手法によって設計されていることによる。
中世ヨーロッパで建立されたカテドラルのような大建造物と同じく、ITプロジェクトは膨大なコストと時間がかかり、またプロジェクトがみごと完了し、カット・オーバーに至らない限り、価値はもたらされない。しかも、最終的に出来上がったITシステムは柔軟性に欠け、プロジェクトの開始時点であった数年前のビジネス要件にしか対応できていない。
パッケージ・ソフトの柔軟性は、このところ改善されてきてはいるものの、新たに出現したビジネスチャンスを生かすために、エンタープライズ・システム(全社規模で導入されるシステム)を再構築するのはとんでもなく高くつき、難しいと感じている企業は多い。
スイッチを入れた瞬間、レガシー化してしまうようなITシステムはいらない。一方、カット・オーバーからかなりの時間が経過していても、迅速かつ継続的に改善できるシステムは構築可能であり、またそうあるべきである。
我々はこの10年間、ITシステムの設計と導入について研究し、その過程で多くの企業のお手伝いをしてきた。その作業を通じて、コスト削減だけでなく既存事業の成長と新規事業への参入を支えるアプローチとは何であるかを特定することができた。
我々はそれを「パス方式」と命名した。というのも、プロジェクトを開始する前にシステムに必要な規格をすべて定義する代わりに、このアプローチでは、システムが徐々に発展していくようなパス(経路)をつくることが焦点となるからである。
このパス方式の前提には、将来何が必要になるのか、もれなく具体的に特定することはほぼ不可能であり、またプロジェクト開始前にあらゆる要件を詰めることも同じく困難であり、かえって高くつくという認識がある。