『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』の創刊40周年記念号が発売となる。編集を終えて編集長が「この号をどう読んでもらいたいか」を語る。
20周年記念号、30周年記念号を見て感じたこと
お陰さまで今年『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)は創刊40周年を迎えることができました。そして、今日10月8日に創刊40周年記念号を刊行します。
この企画は春から練っていました。当初は、過去にDHBRに掲載された珠玉の論文を並べることを想定していました。DHBRには、ピーター・ドラッカーやマイケル・ポーターをはじめ、世界の第一線級の論考を日本で最初に紹介してきたという歴史があります。これらを紹介することで、読者にDHBRを知ってもらおうかと思いましたが、つめて考えていくうちにやめました。
いまの日本が置かれている状況は、過去の延長線ではない未来に対し、どう新しい未来を切り拓いていくかが課題です。そんないま、過去の論文を誇るより、未来につながる記念号をつくりたい。そう考えて生まれたのが、この号です。
未来をつくるのは若い人に違いない。そこで、これからの世界を変えてくれるであろう、現在40歳未満の経営者20人を選出して紹介しました。企画から選出過程、そして取材へと試行錯誤の連続でした。しかし、20人の方々が素晴らしく、これらの方々を紹介できる喜びは大変さに勝りました。

20周年記念号(右)と、30周年記念号(左)。
編集作業のピークも超えたある休日、会社で作業をしていたら、ふと「20周年、30周年ではどんな記念号をつくったのだろう」と気になり、書庫からバックナンバーを取り出しました。その時、走馬灯のように、この雑誌に関わってきた多くの方々の存在が頭を駆け巡りました。昔の編集長、以前一緒に編集部で働いた仲間、この雑誌を売るために尽力してくれた営業や広告担当の人たち、そして読者や執筆者の方々。お会いしたこともない、顔を知らない方々が大勢います。それらの方々の存在が、一気に目の前に表れたようでした。「巨人の肩に乗る」という言葉は大げさかもしれませんが、それらの方々の存在なくして、40周年がなかった事実、そしてその節目で自分たちが「記念号」をつくっている重さを今頃になって感じた瞬間でした。
過去への想いは次に未来へと変わります。「そうか、この40周年記念号は、10年後、20年後に見られるんだ」という事実にはっとしました。そして、「胸を張って未来の編集部に見てもらえる号をつくれた」ことに感無量になりました。
DHBRこそ未来をつくる一員でありたい
編集作業の大詰めは、表紙のデザインを決めることです。今回、随分早い段階から「20人の人の顔写真を出そう」と決めていました。しかし、取材から誌面の編集をしているうちに、少しずつ違和感が出てきました。そしてデザイナーとのやり取りをしていて、言われて気が付いたのですが、この号は素晴らしい20人を紹介するけど、読者に「凄い人たちがいる」と感心してもらいたいんじゃない。こういう方々がいることを通して、少しでも多くの人が「自分も未来をつくる人になろう」と思ってもらいたいことに気がつきました。そうなんです。これは自分事として読んでもらいたい。そこで思い切って、表紙はシンプルに、本来一番目立つ真ん中を空欄にしました。最初に営業の人に見せた時には、「真ん中にはどんなビジュアルが入るんですか?」と聞かれてしまいましたが、最終的には編集部の案を通してくれました。
「未来をつくる」とは、世界を変えるような企業をつくるというものだけでは決してありません。隣の人に優しい言葉を掛ける人が増えることでも、未来は「思いやりある社会」へと舵を切ります。マクロのトレンドは悲観的ですが、いい未来をつくる人が増えることで社会は変わっていく。DHBRもその一員に加わりたい。この40周年記念号が、そんな時代をみんなでつくっている一助になれば幸いです。(編集長・岩佐文夫)