成長が失速し、減収に転じる理由

 リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー(リーバイス)の経営陣が、先行きを見通せなかったのは、しかたのないことだったのかもしれない。

 あれは1996年のことである。リーバイスは創業以来の好業績に沸き、売上高は70億ドルに達した。それまで成長街道をひた走り、売上高は10年で倍増した。85年に株式を非公開化して以来、主力の〈リーバイス501〉をみごと復活させた一方、チノパンツの〈ドッカーズ〉を立ち上げたほか、売上高の海外比率は23%から38%へ、また利益は50%を超えていた。95年には、もともと好調だった成長率がさらに跳ね上がった。

 ところが以後、成長がぴたりと止まってしまう。売上高は96年をピークに急減し、2000年は4年前より35%も少ない46億ドルにとどまった。株価に至ってはさらに下げ幅が大きく、証券アナリストの推計によれば、時価総額は4年間で140億ドルから80億ドルまで縮小したという。

 主戦場であるアメリカのジーンズ市場において、90年に31%だったシェアがその後は低下の一途をたどり、90年代の終わりには14%まで落ち込んだ。現在新たな経営陣の下、全社変革を推し進めており、どうにか失地を取り戻しつつあるようだが、成長軌道を再び描くには至っていない。

 これは、売上げの伸びが止まった極端な例かもしれない。とはいえ、問題のなさそうな組織でも、似たような危機に見舞われるおそれがある。3M、アップル、バンク・ワン(現JPモルガン・チェース)、キャタピラー、ダイムラー、トイザらス、ボルボ・カーズなど、売上げの頭打ちを経験した企業を見ると、リーバイスと共通するところが少なくない。

 これらの企業はいずれも、売上高の成長は何の前触れもなく止まると痛感したことだろう。リーバイスと同じく、主要な財務指標がかつてない好調ぶりを示した直後、つまり加速した直後に、成長に急ブレーキがかかった。そしてひとたび勢いが削がれると、まるで企業戦略の柱がへし折られたようになる(図表1「成長は突然止まる」を参照)。

図表1 成長は突然止まる

「フォーチュン100」と「フォーチュン・グローバル100」のなかで、1955年から2006年の間に成長のピークを迎えた企業について、その前後の成長率がどのように推移していたかを分析したところ、グラフのような結果となった。成長率は緩やかに低減していくのではなく、上昇が加速されピークに達した後、すべてのエネルギーを使い切ったかのように、いっきにブレーキがかかるのだ。

 経営陣にすれば、売上げの頭打ちはまったく寝耳に水である。主要な財務指標からは、変調の兆しはまず伝わってこない。