イノベーションに必要な
業際型チーム

 昔から企業は自社業界のエコシステム内で他者と協力し、納入業者やパートナー、顧客、さらには競合他社まで巻き込んで一緒に仕事をしてきた。しかし、イノベーションの重要性、とりわけ一筋縄ではいかない問題(求められるものが不完全だったり矛盾していたりコロコロ変わるような問題)を解決する重要性が増すにつれ、多くの組織はそれまで付き合いのなかった、業界エコシステム外部のはるか遠くにいるパートナーの能力を活用するようになってきている。このような業界の垣根を超えたコラボレーションが抜本的なイノベーションを生み出せるのは明らかだ。だが、いかにしてそのようなコラボレーションを構築し、運営すればいいのか、その方法はそれほど明らかになっていない。

 こうした「業際型チーム」では、まったく畑違いの専門知識が混ざり合うのが普通であり、それが問題を生み出す。チーム参加者はそれぞれ異なる知的世界の住人であり、話す専門用語も違う。業界や職業によって異なる行動基準と価値観の溝はさらに大きな場合もある。たとえば同じ業界にいる人々なら、課せられた使命の前提部分は言われなくてもわかるのが普通だ。職位の異なる人々が協力する際の振る舞い方や、プロジェクトの各段階でクリアすべき水準など、そのほかにもさまざまなことを共有している。

 こうした前提は行動パターンに微妙な影響を与え、そこから外れた行動は当然ながら水準以下に感じられる。このため業際型チームを結成すると、メンバー同士が文化的衝突に苦しむケースが頻繁に生じる。たとえばドイツのIT業界のスタートアップ企業と米国の大手ヘルスケア企業との間には非常に大きな企業文化の違いがあるだろう。だが2社が協力してイノベーションを起こすためには、両社で共通の考え方をする必要がある。