同社のセーターやカーディガンはとても高価です。普段、服装にあまり気を遣わない僕のような人間には無縁の製品でした。しかし、会社の魅力を知ると、実際に製品も試したくなる。本を読んでから1年後、この度同社のセーターを購入しました。
まず10月に東京で企画展が開催された折に、実際にセーターの色を見て、ニットの色合いに一目惚れ。買うと決めずに採寸してもらったら、その対応が実に適切。その夜、ネットで注文すると、その後のメールのやりとりが、ビジネスライクではなく、かといって馴れ馴れしいものでもない。メールの頻度もタイミングを得たもので、見知らぬ担当者の方とのメールが楽しくもありました。そしていよいよ編みあがったセーターが届きました。宅配便の伝票の文字から、ガムテープの貼り方まで、丁寧になされたことが一目瞭然です。箱を空けると、同社のロゴが押された薄紙に包まれた品物が。編み手さん(たかこさん)からのお手紙も同封されていて、まさに自分のために、編み手さんが編んでくれて、自分のために梱包してくれて、自分のために発送してくれたんだという実感が湧いてきます。実際のセーターの品質は申し分なく、早速会社で褒めてもらいました。このプロセスを通して、気仙沼ニッティングのやりたいことが見事に実現されていることを知りました。そして、僕はこの会社と「お付き合いしたい」という動機から製品を購入したのだと思います。
誰もが、新しい人と関係を持とうとする際、その人の魅力に気づくことです。そして好きな人と人間関係を築きたい。人と人との関係とはそのようにつながるものだと思います。
同じように、企業も「ここと付き合ってみたい」と思われることから、取引が始まるのではないでしょうか。取引とは製品とお金との交換ではなく、「付き合い」であり、それは購入を検討する段階から使用の段階までの、長い付き合いなのだと思います。(編集長・岩佐文夫)