ソーシャルで話題にしてもらう3つの条件

 こうしたマーケティング活動の結果、チキンタツタキャンペーンは、ツイッターでのメンション数(コメント、シェア、リツイートの総数)では過去最高となり、販売数も予測を大きく超えて予定より早期に販売終了せざるを得ない結果となった。このキャンペーンにおいては、ソーシャル上で話題にしてもらうため、計画的に下記の3つの手法を用いて話題の拡散を狙った。

 1つ目は、「コントラバーシャル(議論したくなる)」という手法である。「タツタか?」「タルタか?」と迷ってしまうというインサイトを捉えたメッセージを打ち出したと前述したが、これは、「迷う時間って実は幸せ」というインサイトをついただけではなく、議論したくなるように実は仕向けている。「自分はタツタ派」「いやいや、タルタでしょ!」という議論を起こすことで、ソーシャル上でコメントしやすくなり、言及される数が増える。このように、対立軸を打ち出して議論させるという手法は、バズを起こさせる上では有効な手法の一つである。

 2つ目は、「ツッコマレビリティ(ツッコみたくなる)」という手法だ。メディア発表の前日に、「チキンタ○タが発売!○に入る文字はなんでしょう?」というツイートをした。誰もがチキンタツタとすぐに分かるクイズをあえて出すことで、「タツタ待ってました!」というコメントを誘った。実際にはそうしたコメント以外にも、「タカタ社長ですか?」とか、「タニタとコラボして健康路線?」といった声も挙がり、ネット上で盛り上がりを見せた。そして、そうした予想をいい意味で裏切るかのように、「実はタルタも出ます!」という落ちをつけたのだった。ここで活用したソーシャルで有効な手段は、「誰でも簡単にツッコめる」というものである。実は「ツッコむ」という行為は、ソーシャルにおいて最も手軽にコメントできる行為だと思っている。ソーシャルで自分の意見をあまり主張すると、反感を買ったり、否定的な意見が返ってきたりしかねないが、「ツッコむ」という行為であれば周囲から否定されることはほぼなく、消費者としては非常にコメントがしやすい。そのため、「ツッコみたくなる隙をあえて用意する」という手法は極めて有効なのである。

 3つ目は、「フォトジェニック(写真に撮りたくなる)」なパッケージである。パッケージはサイコロのようなボックスに「タ」「ツ」「タ」とか「タ」「ル」「タ」と書いてあるが、これが「タツタ」か「タルタ」かが一目で分かるものなので、写真に撮って「タツタ食べた!」というように投稿しやすくなっている。インスタグラムの成長が示すように、今日においてソーシャルは写真と共に投稿されるのが常である。逆に言うと、「載せたいと思う写真がないと載せない」のである。そのため、この「フォトジェニック」という手法は、ソーシャルでの投稿機会を増やすと共に、もはやソーシャルでアップしてもらうためには必須要素とすら言える。