選抜漏れ中高年社員を見捨てるな
高岡:結局、日本の働き方改革は、基本的にホワイトカラーの生産性をどう上げるかという話なんですよ。
弊社の離職率は2%以下で、一般的な日本企業と比べてもかなり低い。ほとんどが定年まで働きます。事実上の終身雇用ですが、ホワイトカラーエグゼンプションのコンセプトを入れても、ここは変えません。
その代わりに、イノベーションにチャレンジしなくなった人は評価が下がり、降格もあり得る制度に変えました。本部長でも部長でも降格。評価が下がり続けていれば、何の役職もない平社員まで降格です。逆に一旦降格されても、評価が上がればまた昇格する。

キャリア形成コンサルタント
兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにてコンサルタント、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年に独立し、人材育成、組織運営に関わるコンサルティング業務に従事。著書に『採用基準』(2012年)『生産性』(2016年)(ともにダイヤモンド社) がある。
ウェブサイトhttp://igayasuyo.com/
伊賀:たしかに日本はアメリカみたいに簡単に解雇はできないし、私もそれがいいとは思いません。ただ、解雇されないからいい制度なのかというと、そうとも思えない。
日本には組織の中で諦められ、放置されてしまっている中高年社員がたくさんいます。会社組織は上にいくほどポジションが少なくなるピラミッド型ですから、課長、部長、役員と選抜を経るごとに、選抜に漏れた社員が増えていきます。
高度成長期なら業容拡大に応じて子会社や関連会社での再チャンスが与えられたけど、今は本当に「定年まで毎日、通勤すること」だけが仕事になってる人もいる。これでは本人にとっても不幸だし、モチベーションの下がったままの人が増えると会社全体の生産性も落ちてしまう。国全体で労働力不足が大問題になってきているのに、活かされていない人材が大量に放置されているのは大きな損失です。
そういう社員を再教育して、きちんとフィードバックを与え、モチベーションの減退を防ぐ。簡単に解雇ができないからこそ、そういう人事制度を整えるべきです。社内選抜に漏れたといっても、トレーニングや評価次第で伸びる人はたくさんいるはずなので。
高岡:そうですね。弊社は大きく分けると、モビリティ(転勤)の有無によって、マネジメントコースとスペシャリストコースの2つのキャリアパスがあって、マネジメントコースは全てのマネジメントポジションへのチャンスが与えられる。
伊賀:それはチャレンジしようとしている人、ファイティングポーズを取り続けている人は応援するよということですよね。
高岡:管理職は、経験×能力×パッション。歳を取って一番なくなるのが、パッション。これをどう維持するかが課題なんです。
伊賀:日本には天然資源がない、あるのは人的資源だけだといわれますが、そのわりには人材を無駄にしすぎです。どんなに優秀でも若いというだけの理由で他の人と同じレベルの仕事しか与えなかったり、一度選抜に漏れたら「できない人」という烙印を押して、再トレーニングも評価もしない。これじゃあ産油国が唯一の資源である石油を海に流して無駄にしているのと同じです。ホントにもったいない。