チャレンジしても大抵は失敗する

伊賀:それともう一つ、多くの人がチャレンジすることを怖がるのは、チャレンジの結果を成功か失敗かの二者択一で判断しているからだと思うんです。

 常にチャレンジをしている人って、成功までの長い道のりの中で、何度も失敗しながら改善や軌道修正を重ねていく。ときには途中で「このままでは成功にたどり着かない」と思えば、傷口が大きくなる前に見切ったり、ルートを変えてゴールを目指したり。そうやってたくさんの失敗を積み重ねながら、成功にたどり着きますよね。

高岡:失敗しても傷口をどれだけ小さくできるか、イノベーションにチャレンジするとき、私も常に考えています。少し古い話で言うと、「キットカット」の期間限定商品を出したとき。まともに掛け合ってもスイスの本社がOKというわけがない。世界中どこにも前例はないし、工場の稼働率を考えたら、一年中24時間同じ製品をつくっているのがもっとも生産性は高い。

 でも、日本が世界に誇るコンビニエンスストアは、定番商品でもどんどん入れ替える。少しでも売り上げが落ちると、陳列棚から外されてしまう。であれば、最初から外されることを前提に2ヵ月限定商品をつくってみようと思って、スイスには内緒にしたまま北海道でストロベリー味のテストマーケティングを実施しました。失敗しても傷口を広げないためです。

 結果は、2ヵ月どころか、3週間で売り切れるほどの大反響。このデータを持ってスイスに行ったら、「どんどんやればいいじゃないか」とOKが出た。

 要するに失敗は誰しもするので、大きなチャレンジは小さく始めること。そうすれば、失敗しても傷口は小さいし、うまくいくことが証明できれば、組織を説得できる。その基本を外さなければ、あまり大きな失敗はしません。

伊賀:そうやってデータを取って、ファクトで説得できると強いですよね。グローバル企業において、文化的な背景を共有していない人と議論をするときには、特に大事なことだと思います。

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【著作紹介】

生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
(伊賀泰代:著)

「成長するとは、生産性が上がること」元マッキンゼーの人材育成マネジャーが明かす生産性の上げ方。『採用基準』から4年。いま「働き方改革」で最も重視すべきものを問う。

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