サステナビリティの本質

 サステナビリティは、「生態系が健全さを保ち、永久に働きを保っていく力」と自然科学では定義される。そしていまや、これはすべての企業のかけ声になっている。

 ゼネラル・エレクトリックは壮大な「エコマジネーション」・プロジェクトを展開し、コカ・コーラは水質保全に取り組み、ウォルマート・ストアーズは容器や包装ゴミの削減に向けて努力し、ナイキは有害化学物質を使わずに靴を製造している。

 これら高邁な試みは、アルミニウム大手のアルキャン[注1]が2002年のサステナビリティ・リポートで表明した「サステナビリティの追求に終わりはありません。たゆまぬ学習と変革が求められるのです」という精神を体現するものといえる。

 しかし残念ながら、この認識は誤っている。少なくとも、「サステナビリティを確保するには、一歩一歩、いつまでも努力を積み重ねる必要がある」という考え方は、経済とエコロジーの折り合いを早くつけたいと考えるマネジャーたちのやる気を削ぐ。悪くすると、真に持続可能なビジネスを築こうとする努力を怠るための言い訳にもされかねない。

 サステナビリティの追求は、実現性に乏しい漠然とした目標ではなく、地に足の着いた目標でなければいけない。

 私がこう考えるようになったきっかけは、1980年代に着手したある調査だった。「フォーチュン500」に名を連ねる某企業が、有害物質をめぐるトラブルを起こし、その対処への協力を依頼してきたのだ。私はこの経験に触発され、以後、「サステナビリティの確かな拠りどころ」を探す長い旅が始まった。

 経営者、科学者、エンジニア、リサーチャー、設計者、建築家など数百人をインタビューしたところ、「この地球上におけるサステナビリティの本質は、ごく身近なところにある」というシンプルな結論に達した。

 事実、完璧な手本がある。それは、何億年もの試行錯誤を経て磨き上げられてきた、この地球の「バイオスフィア」(生物圏)である。